両者のシナジー効果は極めて限定的
不振の要因は、サマンサのデザインが時代に合わなくなってきたことがあるだろう。ファッションのカジュアル化が進み、個性的なデザインの商品が多いサマンサの需要は薄れていった。
そうした厳しい状況にあったサマンサに手を差し伸べたのがコナカだ。コナカは湖中謙介社長が所有するサマンサ株を取得し、サマンサを持ち分法適用会社とした。コナカは「コナカにはない女性の顧客層を有しており、シナジー効果が期待できる」としている。
だが、「シナジーは極めて限定的」というのがもっぱらの見方だ。コナカは郊外型の「紳士服のコナカ」で女性用スーツなども扱っているが、都市型のサマンサとは立地もターゲット層も大きく異なり、シナジーは見込みにくい。
スーツショップでは都市型の「スーツセレクト」があるが、デザインのテイストは異なる。そのほか主に女性向けの服飾雑貨を扱う「フィットハウス」は郊外ロードサイドが多くターゲット層が異なるほか、店舗数が約30店と多くはなく大きな販売増は見込めそうもない。
スーツ市場の縮小が止まらない
ではなぜコナカはサマンサを傘下に収めるのか。それは、シナジーへの期待以上に、新たな収益源を確立して事業リスクの分散化を図る狙いがあるからだろう。
コナカの主力商材であるスーツは厳しい状況にある。労働の担い手となる生産年齢人口の減少や、オフィスにおける制服のカジュアル化などでスーツの需要は激減。総務省の家計調査によると、18年の1世帯あたりのスーツへの支出額は4976円で、8782円だった00年からは4割強も減った。
それゆえコナカの業績も厳しい。直近本決算の18年9月期連結決算は、売上高が前期比4.4%減の651億円、純損益は4億9300万円の赤字(前期は9億1000万円の黒字)だった。売上高は、09年9月期に704億円を記録して以来、この10年ほどは伸び悩んでいる。純損益については、16年9月期にも赤字に陥った。低空飛行が続いているといって差し支えないだろう。