非正規から抜け出せず、生活が厳しい人もいるが?

——そうなればいいのですが、非正規社員問題のようになりませんか。非正規社員は20年ほど前から増えました。当時は自分に合った働き方を自由に選択できるというメリットが強調されましたが、振り返ってみると、非正規から抜け出せず、厳しい生活を強いられている人が増えました。

フリーランスの報酬は適正な単価でないと持続性はありません。ランサーズでは以前は市場価格がわからず、意図せず低い金額で発注してしまうクライアントもいましたが、現在はクライアントの企業からの依頼内容をAI(人工知能)で分析し、適正単価でマッチングされるような仕組みを取り入れています。その結果、この1、2年は単価に関しても多くのフリーランスの方に満足いただいています。仕事のジャンルも変わってきており、マーケティングやコンサルティングなど付加価値の高い業務が増えています。

ランサーズが実施している「フリーランス実態調査」によると、2015年以降増えてきたフリーランス人口は、18年から19年にかけては約1100万人で横ばいでした。これは新しくフリーランスになる人が増えている一方、正社員になる人も同様に増えているためです。つまり正社員とフリーランスを行ったり来たりする人が増えているのではないかとポジティブに受け止めています。

撮影=プレジデントオンライン編集部
ランサーズ・秋好陽介社長

各人が自分らしくやりたいことをやれる選択肢があることが大切です。私は正社員から自己実現のためにフリーランスになることだけでなくて、フリーランスからから正社員になることもいいことだと思っています。

柔軟な生活ができると満足感をもつ人も多い

——フリーランスと言っても一くくりにできません。正社員で働きながら副業として働いている人や定年や出産でやりたい仕事を余暇にするというフリーランスはそれでいいかもしれません。コンサルタントや弁護士のような高い技能を持ったフリーランスも心配は少ないでしょう。一方、現状ではフリーランスの仕事だけで生きていくというのは大変です。正社員になりたくてもなれないという人も多いはずです。年金・社会保険料の支払いなどに不安をもっていないフリーランスは一握りではないでしょうか。

フリーランスにもいろいろな形があります。実態調査によると、自分で自由に働け、柔軟な生活ができるという満足感を持っている人も多くいます。私自身も大学生だった時に大阪でフリーランスとして働き、「自分が求められている」と実感できました。それは働くことの大きなモチベーションになりました。

もちろん課題もあります。フリーランスは労働時間の多くを経理や税務申告など本業以外に費やしています。ランサーズではそうした煩雑な事務作業をワンコインでサポートする「フリーランス・ベーシックス」というサービスを提供しています。