▼創薬ベンチャー、その驚異の赤字決算

赤字続きでも破たんしないカラクリ

IT企業と同様に、創業当初に大幅な赤字を余儀なくされる業界のひとつとして、創薬ベンチャーがある。iPS細胞、間葉系幹細胞による治療薬の開発を手掛けるヘリオスもその1つだ。11年に設立され、15年にマザーズに上場しているが、上場後1度も黒字になったことがない。むしろ赤字幅は年々拡大している。

18年12月期の決算は売上高ゼロ、営業利益は▲50億円にもかかわらず、破たんしないのはなぜかといえば、創薬ベンチャーは上場時に莫大な資金を投資家から調達しているからだ。現預金を多く保有しているので破たんしないのだ。創薬ベンチャーは収益が得られるまで長い期間がかかるが、開発した新薬が当たれば莫大な利益が得られる。それを狙って多くの投資家が資金調達に応じる構造になっている。

破たんしない理由は、決算書の賃借対照表の、資本金+資本剰余金、現預金、棚卸資産や有形固定資産の項目を見ればわかる。

資本金+資本剰余金は、株主の出資で得た資金の合計。融資と違い、返済する必要がない資金だ。この金額が大きければ、赤字が続いても資金繰りに困ることはない。ヘリオスの貸借対照表で見ると227億円に上る。この金額を投資家から集めたことになる。

現預金を多く保有していれば、これからの投資に対応できる余力が大きいことを意味する。株主から集めた資金は現預金として保有される。ヘリオスは赤字が続いているにもかかわらず、116億円の現預金を保有している。

一方で棚卸資産や有形固定資産が少なければ、事業運営において実物資産への投資が少なくて済み、その分だけ研究開発に投資できることを意味する。ヘリオスは棚卸資産をほとんど持たず、有形固定資産も取得価額でわずか4億円程度。創薬ベンチャーは、それほど設備投資が必要ないからだ。その分、研究開発費は1年で42億円と潤沢に使えている。

このように投資家の期待を集める業種は、上場で多額の資金を調達できるので破たんしにくい。その資金を使い果たしても、増資で追加調達ができるかもしれない。この点ではITビジネスも似ている。仮にLINE Payが上場すれば、多くの投資家が株式を購入するだろう。どちらも破たんしにくいビジネスモデルといえる。