メルペイは17年11月20日に設立されたばかり。第1期の18年6月期決算は7カ月ほどの変則決算となり売上高はゼロ、販売費及び一般管理費が8.8億円で当期純利益は▲8.9億円となっている。LINE Payとメルペイの決算には還元キャンペーンの費用が含まれていないので、次の決算ではマイナス幅がさらに拡大する可能性が高い。
これだけの損失を出しながら、なぜ破たんしないのか、疑問に思う読者も多いだろう。しかし、創業当初に大きな赤字が出るのはインフラ系のIT企業の宿命であり、驚くことではない。
決済サービスのようなITビジネスで安定収益を確保するためには、いかに多くの会員を集めるかが勝負になる。そのためには、サービス開始時点で莫大なマーケティング費用やキャンペーン費用が必要になる。
一方で、高額な設備投資が必要ないというメリットもある。製造業であれば、工場建設や設備の購入に莫大な資金がかかる。それを考えれば、100億円キャンペーンは驚くほど多額な初期投資というわけではない。
設備投資とキャンペーンの違い
設備投資とキャンペーンの違いは、決算書に計上されるタイミング。キャンペーンの場合は、実施した年に全額が費用として表れるが、設備投資は違う。たとえば、新規事業のために100億円を使い工場を建設すると、貸借対照表に固定資産100億円と記載される。そのうえで工場の耐用年数が20年であれば、100億円を20年かけて徐々に経費計上していく。
結果的に赤字になりにくいわけだが、新規事業から撤退することになった場合には、大きな影響が出る。減価償却の残りが一気にマイナスとなって表れ、赤字に転落する可能性がある。工場を閉鎖するにも莫大な費用がかかるので、大きな痛手となる。
ITビジネスでは固定資産が少ないので、赤字が見えやすい。決算書を確認してみると、PayPayは、407億円の総資産のうち現金及び現金同等物(流動資産)が335億円を占め、固定資産はかなり少ないようだ。LINE Payも流動資産113億円に対して、固定資産は36億円。メルペイも流動資産6.3億円に対し、固定資産は0.6億円だ。
流動資産とは、現預金のほか、主におおむね1年以内に現金化される資産だから、この金額に余裕があれば、資金繰りに窮することはない。その意味では約6億円しか流動資産を持たないメルペイが不利に見えるが、正しく判断するには親会社の状況も併せて考える必要がある。