親会社のサポート力の勝敗は

親会社の決算を見る場合のポイントは現預金、純資産、利益の3つだ。

現預金を多く保有していれば、子会社の資金需要に対応できることを意味する。また、純資産や利益が大きければ子会社が大きな赤字を出してもそれに耐えうる体力がある。この場合の利益とは、営業利益でも経常利益のどちらでもいい。営業利益は本業で稼いだ利益を表す。経常利益は営業利益に資産運用による利益など、本業以外で稼いだ利益を加えたものだ。

LINE Payの親会社であるLINEの決算を見ると、18年12月期(連結)で売上収益(売上高)が2071億円で営業利益は161億円。これは子会社LINE Payの業績も織り込んだ数字だ。

セグメント別損益を見ると、戦略事業の営業利益は349億円のマイナスだが、コア事業では265億円のプラスになっている。

LINE Payは戦略事業に含まれる。コア事業とは広告やゲームなどの事業だ。LINEはコア事業でしっかり稼いでいるので、戦略事業のマイナスは大きな問題になる金額ではないというわけだ。

コア事業で安定収益を確保しながら戦略事業で新しい分野を開拓していく。そのためにはある程度の先行投資が必要になる。そう考えれば、還元キャンペーンにしても無謀な戦略とはいえない。

PayPayはソフトバンクグループのソフトバンクとヤフーが合弁で設立した会社。ソフトバンクグループの19年3月期の売上高は9兆6022億円で営業利益は2兆3539億円と順調。純資産(自己資本)を意味する親会社の所有者に帰属する持分は7兆6214億円で現金及び現金同等物の期末残高は3兆8585億円と、子会社の赤字を支える体力も資金も十分に備えている。

メルペイの親会社、メルカリは苦戦している。18年6月期(連結)の売上高は357億円で経常利益は▲47億円。直近3期の推移を見ると売上高は毎年100億円規模で増加しているものの、経常利益のマイナスが拡大している。

しかし、同社は18年6月にマザーズへ上場し資金調達を行った。結果、純資産は44億円から544億円に増加、現金及び現金同等物の期末残高も508億円から1091億円になっている。19年6月期の業績が気になるところだが、同社は7月25日に連結業績予想を下方修正した。売上高は516億円と前期比44.5%増の大幅な成長だが、営業利益は前期の▲44億円から▲121億円へ赤字幅を拡大、純利益は▲137億円の大幅な赤字になる見通しだ。メルペイのキャンペーンの費用が響いたとみられる。

今回検証した3社以外にもスマホ決済に参入している会社は多い。電子マネーがSuicaをはじめとする交通系ICカードとEdyに集約されつつあるように、スマホ決済も最終的には2社か3社が生き残るのではないだろうか。