謀略とは、基本的に知恵で戦う類のものであり、涼やかな頭脳労働のイメージが強い。ところが『三十六計』には、仕掛ける側が、いわば体育会系的な汗臭い努力をせざるを得なくなるという、面白い謀略があるのだ。

それが「無中生有(むちゅうしょうゆう)」。具体的には、次のように説明されている。

「無いのに有るように見せかけて敵の目をあざむく。しかし、最後まであざむきとおすことはむずかしいので、いずれ無から有の状態に転換しなければならない。要するに、仮のかたちで真の姿を隠蔽し、敵を錯覚におとしいれること」