では、ユニクロと同じように、21世紀に入ってポピュラーになった無印良品はどうなのか。無印良品も、シンプルな服を売り、ライフスタイルを示しているのではないか。

確かに、無印良品も一見ユニクロと重なるようなシンプルな服をつくり続けている。運営会社である良品計画のウェブサイトにはこう記されている。

「わけあって、安い」をキャッチフレーズとし、安くて良い品として開発された無印良品。1980年、良品計画の母体である西友の自社開発の経験を基にノーブランドの商品発想でつくられました。商品開発の基本は、生活の基本となる本当に必要なものを、本当に必要なかたちでつくること。そのために、素材を見直し、生産工程の手間を省き、包装を簡略にしました。この方針が時代の美意識に合い、シンプルで美しい商品が長く愛されてきました。

「ノーブランド」のブランド化に成功した

ここでも述べられているように、無印良品は、もともと西友のプライベートブランドとして1980年に誕生した。素材のよさと限りなくシンプルであることを追求し、80年代の個性を競うDCブランド全盛時代に、そのアンチテーゼとしての地位を確立していく。

あえて「無印(ノーブランド)」を貫くことで、無印良品はブランドになった。通常のブランドが差異化のために、「個性」を足し算することで成り立つのならば、無印良品は「引き算のブランド」だ。何もかもを引き算することで、逆に差異化に成功したのである。

年代のリアルクローズ、シンプルな服の流行とともに、無印良品もユニクロ同様、ポピュラリティを獲得していく。それは、DCブランドの「個性」やインポートブランドの過剰な「記号」に疲れた人々にとって、印のないことが癒やしとなったためであろう。

無印良品も人々の関心が衣から食住へ、ファッションからライフスタイルへと移り変わるにつれて、取り扱う商品を広げてきた。食品、化粧品、雑貨、家電、家具、家。現在では、買えないものがないほど、ライフスタイル全般にわたってあらゆる商品を取りそろえている。

着ることから食べること、住むこと、そして暮らすことへ。無印良品の哲学に基づいた「MUJIなくらし」が展開されており、実際のところ私たちは、朝から晩まで無印良品の製品に囲まれて暮らすことができるのだ。

写真=Imaginechina/時事通信フォト
中国・湖北省武漢市にある無印良品の店内=2013年7月19日

くらしをより訴求するため、カフェもオープン

それだけに、無印良品は早くから、単なる店舗を超えた空間をつくり出すことにも力を注いでいる。2001年に旗艦店としてオープンした有楽町店の一角にカフェスペース「Cafe MUJI」を設置し、「素の食」をテーマに身体によい食材を使ったメニューを提供してきた。2007年には、物販販売のない初の飲食単独店舗である「Cafe&Meal MUJI 日比谷」をオープンしている。