無印良品の「Cafe&Meal MUJI」は、「『素の食』はおいしい」をコンセプトに季節の素材をたっぷりと使い、身体にやさしく食べておいしいメニューを取りそろえた飲食業態である。そのコンセプトについて、ウェブサイトにはこう書かれている。

もぎたてのトマトをまるかじりしたときの、あのみずみずしい甘みや酸味。Cafe&Meal MUJIが大切にしているのは、たとえばそんな「素の食」のおいしさです。
太陽や土、水の恵みがたっぷりと染み込んだ素材そのものの味を生かし、自然のうま味を引き出すために、できる限りシンプルに調理しています。化学調味料は最小限に抑え、保存料はいっさい使用しません。
日本を中心に世界中の産地に直接足を運び、
生産者の方々と交流しながらそのときいちばんの旬の食材を調達しています。一方では、フェアトレードや環境に配慮した農法を積極的に採用し、
その土地ならではの伝統料理をメニューに取り入れることで
歴史ある食文化を次世代につなげる試みも行いつづけています。

このように、健康や環境に配慮したカフェを通して、無印良品の食を提案し続けている。

ユニクロが「究極の服」になれた理由

また、無印良品はブックカフェブームに先駆けて「本」にも注目し、本のある空間「MUJI BOOKS」を2015年から展開し始めた。厳選された店舗に、衣類、家具、雑貨、食品などと地続きに無印良品が提案する本が置かれている。そこでは、「知の巨人」松岡正剛監修の下、「くらしのさ(冊、読むことの歴史)し(食)す(素材)せ(生活)そ(装い)」というテーマに沿って、本が分類されているのだ。

米澤泉『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』(幻冬舎新書)

「さしすせそ」には、くらしを彩る調味料のようにという意味が込められているのだろう。MUJI BOOKSでは、本と生活用品を一つの空間に同居させることで、「本と暮らす」生活を提案しているのである。

このように、無印良品はあらゆる商品、本までを使って「MUJIなくらし」を提案している。つまり、衣食住のすべてを無印良品の哲学に基づいてブランド化することで、「MUJIなくらし」を売っているのである。

それは、2019年4月にオープンした銀座の旗艦店にある「MUJI HOTEL」に集約できるだろう。「MUJI HOTEL」は「MUJIなくらし」を体験できる場であり、世界中からファンが押し寄せる「MUJIなくらし」の聖地となるに違いない。

だが、ユニクロは違う。ユニクロは「ユニクロなくらし」を売っているのではない。

「ていねいなくらし」を売っているのだ。しかも、「服」によって。

「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」のがユニクロのステートメントである。初めに服ありきなのである。そこが、無印良品との最大の違いであり、ユニクロが究極の服になれたゆえんではないだろうか。

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