政治や金融以外の歴史・文化の分野で、大阪は日本の中心に
大阪が熱い。G20直後に世界遺産登録が決定。2025年には万博も控える。キーマン、溝畑宏大阪観光局長が大阪好調の秘密を語る――。
19年7月6日に、世界文化遺産登録された百舌鳥・古市古墳群というのは大阪府南部の堺市、羽曳野市、藤井寺市の3市にまたがる49古墳の集まり。なんと、1500年以上のあいだ原型をほぼ崩さず保存されているのです。
それは世界的に見ても極めて驚異的で奇跡的なことで、というのも、大概は爆撃や略奪といった歴史の中で形が変わっていくものだから。それをくぐり抜けて現存しているというのは、非常に珍しいことなんですね。
しかしながら、見た目がダイナミックな他の世界遺産と違って、古墳は地味で話題性に乏しく、今まで注目している人が少なかった。同じ関西の京都や奈良、和歌山と違って、大阪にはこれまで世界遺産がなかったのです。でも、「せっかくこんな歴史的価値のある古墳があるんやったら、アピールせなあかん」ということで、大阪府と堺市、羽曳野市、藤井寺市が立ち上がったのが2007年ころ。古墳の位置さえも知らない人が圧倒的多数な中で、普及や啓発の活動を粘り強く行った。いにしえの5世紀、ちょうど大阪のあのエリアはまさに日本の歴史の中心にあったんだということを人々に思い出してもらったわけです。
タイミングがいいことに、世界遺産決定はG20が終わった1週間後。ちょうど大阪が勢いづいているときでした。今大阪は、G20、ラグビーワールドカップ、25年大阪万博、IR誘致など注目を浴びる催しが続いていて、世界に評価される地方都市へと成長していく時期にある。その一連の流れの中でも、今回の世界遺産登録は高みを目指していくための起爆剤になっていくだろうと思っています。
というのも、「文化」というものは大阪が日本の中心になれる1つの鍵だから。国の構造的に、政治や金融の中心は東京で、それを変えることはできません。でも、歴史、文化、人間力、科学技術イノベーションに関しては、大阪が中心になれるポテンシャルがあると感じています。
その意味で特に堺市は、包丁や線香などのものづくりやスポーツの分野において高い質を持つ「眠れる獅子」でした。実は千利休の出身地でもあるし、お茶の世界で唯一3流派が集まれる場所といったらここしかない。お茶というと京都の宇治、静岡、鹿児島のイメージが強いが、堺市にもそうしたルーツが実はあるんですね。