もう一つ重要なポイントは、アメリカは国民皆保険ではないことだ。このため保険料の負担を嫌って健康保険に入らない若者がたくさんいる。アメリカでは病気になるとお金がかかる、だから食生活を気にすることは、ジムに行って体を鍛えるのと同じように、病気にならないための予防でもあるのだ。

インスタ映えする「サラダボウル」が爆発的ヒット

そんな流れに乗って今度は、4~5年前からニューヨークをはじめとした都市部でサラダ専門店が大ブレイクする。

写真提供=シーズンド・ヴィーガン©soyfierce
「シーズンド・ヴィーガン」オーナーシェフのブレンダ・ビーナーさん(右)と息子でマネージャーのアーロン・ビーナーさん(c)Kim-Julie Hansen

中でも急成長を遂げているのは、さまざまな具材たっぷりのサラダを目の前で作ってくれるファスト・カジュアル・サラダチェーン。パンやライスの代わりにキヌアやカリフラワーライス(カリフラワーを米粒のサイズにカットしたもの)などをベースに大量の野菜、さらに豆腐や、ヴィーガンではない人はサーモンなどのプロテインも乗せて、バランスのとれたサラダランチが手軽に食べられる「ボウル」を売り出している。

工夫を凝らしたドレッシングで味付けされた野菜や豆腐は、多くがローカル(=地元の農場)や自主農園から運ばれるオーガニックフードだ。アメリカの若者たちは野菜のおいしさに目覚めたと言っていいだろう。その中に豊富なヴィーガン・メニューが含まれていたことも見逃せない。

こうした「ボウル」はカラフルでインスタ映えするため、あっという間にソーシャルメディアに広がった。さらに業界トップのファストカジュアル・チェーン「スイートグリーン」は、ヒップホップのスーパースター、ケンドリック・ラマーとのコラボメニューなどを打ち出し、女性的なイメージが強かったサラダを男性にとっても魅力的でエキサイティングなものに変えた。

こうした店にはおしゃれなIT系や、アンダーアーマー、ルルレモンなどのスポーツアパレルに身を包んだジム帰りの健康的でセクシーな男女が立ち寄るイメージが定着。ニューヨークではヘルシーなランチとしてファストフードに取って代わっている。

全米で話題を呼んだ畜産ドキュメンタリー

野菜のイメージはアメリカで飛躍的にアップしている。しかしヴィーガンとして肉をやめようという発想は、どこから来たのだろうか?

筆者は、今年5月に開催されたヴィーガンとベジタリアン食品の見本市「NYベジタリアンフード・フェスティバル」を訪れ、14歳からヴィーガン生活を続けているという運営者のサラ・フィオリさんにこの疑問をぶつけてみた。