「年を取るのは不幸だ」というのは思い込みにすぎない。脳科学者の茂木健一郎氏は「脳は外からの固定観念にとらわれやすい。年齢をものさしに考える癖がつくと、発揮できる能力を発揮できないままに終わってしまうことになる」と指摘する――。

※本稿は、茂木健一郎『ど忘れをチャンスに変える思い出す力』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

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「年齢」を「自分らしさ」にしている

これからの時代は、男らしさ、女らしさなど、ありとあらゆる「らしさ」が取り除かれていく時代になります。

私たちが無意識のうちにまとっている「らしさ」の一つに、年齢があります。

われわれは「まだ何歳だから」「もう何歳だから」できないとか、あの人は「同じ世代」だからつき合いやすい、「違う世代」だからつき合いにくいというように、年齢で他人の能力・人物像をステレオタイプに判断してしまいがちです。

これは「エイジズム(年齢差別)」と呼ばれ、男女差別と同じように、撤廃が叫ばれている重大な差別です。

あらゆる年代の人が「年齢差別」を感じている

2017年に行われたTEDカンファレンスで、「エイジズムに終止符を!」というトークがとても評判になりました。ニューヨークの作家兼活動家で、1952年生まれのアシュトン・アップルホワイトさんが、われわれは人種差別や男女差別、いろいろな差別をなくそうとしてきたけれど、年齢による差別が残っている、もうエイジズムをやめようと訴えました。

僕はその会場にいたからよく覚えているのですが、そのトークは、どんな世代の人からも賞賛を浴びていました。「そうそう、私もそういう扱いをされたことがある! それはやっぱりおかしいよね?」とほとんどの人が共感できるほどに、エイジズムは世の中にはびこっています。

残念ながら、日本は国際的に見るとエイジズムが強い国だと言わなければなりません。しかし、日本に限らず、どの文化圏でもエイジズムはあって、特に女性は男性以上にエイジズムの対象になりやすいところがあります。