ハシゴを外され下から火を放たれ

ホンダの社員は「君の夢はなにか」と互いに問うことが多いという。自分たちがつくりたいクルマはなにか。自分が目指すものはなにか。今日も開発の大部屋で「ワイガヤ」と呼ばれる熱のこもった会議は踊る。
ホンダの社員は「君の夢はなにか」と互いに問うことが多いという。自分たちがつくりたいクルマはなにか。自分が目指すものはなにか。今日も開発の大部屋で「ワイガヤ」と呼ばれる熱のこもった会議は踊る。

すべては出張先のロサンゼルスにかかってきた一本の携帯電話から始まった。「えっ、私がハイブリッド車のLPLですか」。ホンダで車の開発を担う本田技術研究所のエンジニア、関康成は耳を疑った。2006年1月のことだ。

LPL(ラージプロジェクトリーダー)は開発プロジェクトの最高責任者を意味する。確かに自分は、世界一厳しい米カリフォルニア州の排ガス規制をクリアする初のエンジンを開発し、環境関連には馴染みがある。高いハードルにも音を上げない精神的なタフさも自信があった。ただ、ハイブリッド車も初めてなら、LPLも経験したことがなかった。