遺伝的な要因が大きいことはわかっている
親の養育・愛情の不足が原因でないとしたら、何がASDの原因なのでしょうか。その答えは、まだ解明されていません。
今わかっていることとしては、遺伝的な要因が大きいことです。最近の双生児研究では、ASDの一卵性双生児の一致率が88%、二卵性双生児の一致率が31%と報告されています。また近親者にASDがいると、診断基準を満たしていない場合であっても、対人関係やコミュニケーションに問題を抱えるケースが多いようです。これらは遺伝的な要因の重要性を示す所見です。
また、特定の遺伝性疾患を持つ人に、ASDの合併率が高いことも知られています。例えば、「フラジャイル(脆弱)X症候群」です。これは、X染色体上の遺伝子異常を原因とする疾患で、知的障害、情動不安定、自閉症症状などの精神症状に、細長い顔、大耳介、扁平足、巨大睾丸、関節の過伸展などの身体的特徴を伴うものです。
対人恐怖=発達障害ではない
結節性硬化症においてもASDの合併は高い率を示しています。この疾患は遺伝性の母斑症(神経皮膚症候群)の1つです。顔面の血管線維腫、てんかん、知的障害が特徴的で、全身に多数の良性腫瘍を伴うこともあります。そのほか、レット症候群、アンジェルマン症候群などの遺伝性疾患においてもASD症状を示す頻度が高いことが知られています。
このように遺伝的な要因が大きいと考えられているASDですが、遺伝以外の要因も検討されています。例えば、妊娠中の子宮出血、母親の糖尿病、周産期の低酸素状態などが、子供のASDの危険因子と考えられています。
対人恐怖が原因で自閉的な症状や「空気の読めなさ」が生じる場合もありますが、それは発達障害とは異なるものです。
これは、「対人恐怖症」と診断されることもあれば、「社会不安障害」、「社交不安障害」という病名がつくこともあります。
また、統合失調症の初期段階においても人を怖がり、そこから被害妄想に進展していくこともみられます。