日本の負担は独・韓などを上回っている

一方、冷静に日米安全保障の内容を考えると、日本は米国との安保関係を維持するために、それなりの負担はしてきたともいえる。まず、日本には米軍の基地がある。在日米軍駐留経費負担(通称、思いやり予算)などを通して、米軍の駐留に必要な資金の一定額を負担している。

国際的にみても、日本の負担は独・韓などを上回っている。米国にとっても、わが国が“不沈空母”として中国や北朝鮮への防波堤となり、極東地域での米国の抑止力をきかせ影響力を維持していくためにもわが国の存在は欠かせないはずだ。

また、日米の安保関係を維持・強化するために、わが国はワシントンの要求をのんできた。1980年代の日米半導体摩擦はよい例だ。米国は半導体のダンピングを行っていると批判し圧力をかけた。1986年には、日米半導体協定が締結され、外国製半導体の利用を増やすことなどが約された。それでもレーガン政権は満足せず、カラーテレビなどへの関税引き上げを行い、政府は米国の要請に応じで市場開放を進めた。

日米安保の存在もあり、米国は一方的な要求をのませ、実利を得ることができたとも考えられる。わが国が米国に対して繊維、鉄鋼、自動車などの“輸出自主規制”を敷き、米国産業界の不満に配慮したのも同様だ。1985年、ドル高是正に各国が賛同した“プラザ合意”もしかりである。米国は日米安全保障からかなりの実利を得てきたことがわかる。

覇権国としての米国の地位の低下傾向

日米安全保障が片務的だという考えの背景には、トランプ氏の個人的な見解に加え、世界の覇権国家としての米国の地位が徐々に低下していることも影響している。

足元、米国は中国の追い上げに直面している。これは、世界の覇権をめぐる長期的な変化だ。現在、米国は覇権国としての地位を守るため、中国に制裁関税をかけるなどしている。中国の追い上げに加えて、北朝鮮やイランとの対立もある。それらに対応するためには、それなりのコストが掛かる。

米国の地位が盤石であれば、そのコスト負担に耐えることは難しくなかっただろう。しかし、現実には米国の覇権国としての地位は低下していると見るべきだ。トランプ大統領がコスト負担に言及するのは当然のことかもしれない。