ちょっと待て、自然エネルギー!
国際競争に勝つ強いニッポンをつくろう

小泉進次郎

東日本大震災が起きて以来、ほぼ毎週のペースで被災地を訪れています。「なんで政治家がそんなに被災地に行くんだ」という疑問の声を頂戴することもあります。でも私は政治家こそ自分の足で被災地を歩いて、現状を目の当たりにすべきだと思っています。政治家にできることは瓦礫の撤去をすることではありません。被災地にお金を届けることでもない。我々政治家にできること、すべきこととは、国民に対して日本の復興に何が必要なのかメッセージを発信することです。

<strong>小泉進次郎●衆議院議員</strong>。1981年、神奈川県横須賀市生まれ。現在、衆議院にて内閣委員会委員、予算委員会委員、議院運営委員会委員をつとめる。
小泉進次郎●衆議院議員。1981年、神奈川県横須賀市生まれ。現在、衆議院にて内閣委員会委員、予算委員会委員、議院運営委員会委員をつとめる。

政治家という職業は「手に職がない」職業です。弁護士や学校の先生、街のパン屋さんや大工さんなどと違って資格も何もない。もちろん弁護士出身やビジネスマン出身の政治家もいますが、基本的に我々政治家が持っている仕事上の武器は言葉だけです。選挙時になると一斉にマイクを持って街頭に立つのも、言葉だけが我々の持てる唯一の武器だからです。でもだからこそ、私たちの言葉は真実のものでなければなりません。そうでなければ、有権者の方々は我々を信じて国政を任せてはくれないでしょう。だから私は現場を自分の眼で見て歩くのです。

日本は今、財政問題や社会保障問題など課題が山積みです。中でも今回の震災を契機に、待ったなしに急浮上してきたのがエネルギー問題です。

今回ソフトバンクの孫正義さんが新エネルギーの可能性を探る財団などを設立されましたが、私も今の日本にできそうなことはすべてやってみるべきだと思っています。

これまでの日本は、エネルギー=原発の発想でやってきました。「コスト面を考えても、CO2削減の観点からみても原発が一番だ」という論理です。しかし今回の原発事故はその前提をすべてひっくり返しました。どんなにCO2を出さずコストが安くても、安全面に問題があればやはり見直さざるをえません。今後の日本の進むべき道は、原発への依存度を限りなく下げていくと同時に、原発にとって代わる自然再生エネルギーの可能性を追求していく方向だと思います。しかしそのためには太陽光発電だけでは無理で、水力や風力、地熱やバイオ、将来的には海底にあるメタンハイドレートなども必要になってくるでしょう。あらゆるベストミックスを試みるべきです。

ただここで間違えてはいけないのは、「脱原発」という言葉の使い方です。「脱原発」という3文字は、誤解を生みやすい言葉です。なぜなら使う人によって意味合いが異なるからです。「脱原発」あるいは「ゼロ原発」を唱える人々の中には、「いますぐ原発を止めるべきだ」という人もいれば、「将来的に原発を止めるべきだ」という人もいる。つまり同じ「脱原発」でも、人によって時間軸が違うのです。重要なのは、「脱原発」するにしても、「それはいつなのか」という問題です。

私自身は先ほど申し上げたように、原発以外の自然エネルギーの可能性を模索するのが日本の将来にとって好ましいと考えています。しかし「脱原発」を目指すにしても「今日すぐにでもスイッチオフすべきだ」という考え方は取りません。

※本稿は、6月27日に関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス・関西学院会館で開催された第16回国際学部連続講演会「3.11後の日本」の講演要旨です。

※すべて雑誌掲載当時

(吉田茂人、三浦愛美=構成 小原孝博、小倉 泰=撮影 ロイター/AFLO=写真)
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