会社が推す取締役候補に関する"疑惑"

さらにこんな問題も起きている。

多くの企業は会社とのなれ合いを避けるため、社外取締役の適格要件として「独立性基準」というものを定めている。LIXILグループの場合、例えば以下の基準に抵触する人材は取締役候補から外している、としている。少々長いが引用しよう。

「弁護士、公認会計士、税理士、コンサルタントその他の専門的アドバイザーとして、当社グループから役員報酬以外に年間1000万円以上の金銭その他の財産上の利益を得ている者、又は当該利益を得ている者が弁護士法人、法律事務所、監査法人、税理士法人、コンサルティング・ファーム等の法人、組合その他の団体である場合には、当社グループから年間に弁護士法人等の総収入の2%を超える金銭その他の財産上の利益を得ている弁護士法人等に所属する者」

これに対して6月3日、瀬戸氏はこんな趣旨の質問状を会社側に送っている。

「会社提案の取締役候補であるカート・キャンベル氏について、独立性に問題はないと指摘しているが、LIXILグループは同氏が設立したコンサルティング・ファームに対して2015年から16年にかけて年間約4500万円、16年から17年にかけては同約2600万円の契約を結んでいる。これはキャンベル氏のコンサルティング・ファームの総収入の2%を超えているはずだ」

会社側の言い値が通る「取締役候補の提案」

会社側はどう回答しているか。

「キャンベル氏のコンサルティング・ファームは規模が大きく、支払ったおカネは同社の総収入の2%未満。ただ、コンサルティング・ファームの総収入を開示することはできない」

さて招集通知にはどう書かれているか。キャンベル氏の独立性に関する会社側の見解はこうある。

「同氏との間にはコンサルティング・アドバイザリーに関する取引がありますが、直近事業年度において800万円未満であり……」

「直近事業年度」のことにしか触れておらず、それ以前にケタの違うコンサルティングフィーを支払った事実は書かれていないのである。