記者たちが会社法を正しく理解していない

LIXIL(リクシル)グループの経営権争いが佳境を迎えている。対立しているのは、創業家出身の潮田洋一郎会長兼CEOと、その潮田氏にCEOを「解任」された前社長の瀬戸欣哉氏だ。6月25日の株主総会で対立は決着を迎える。

多くのメディアがこの騒動を報じているが、いずれも正確性を欠いている。例えば委任状争奪戦をプロキシーファイトと同義に捉えている点がそうだろう。株主総会で会社側と株主側が対立することはあまりないから誤った記事が出るのだ。今回はそうした間違いを正すとともに、会社と株主が対立する株主総会で、会社側がどれだけ有利に事を運べるのかを検証したい。

記者会見で、辞任の意向を表明したLIXILの潮田洋一郎会長兼最高経営責任者(CEO)(左)と山梨広一社長兼CEO=2019年4月18日、東京都港区(写真=時事通信フォト)

委任状とは「議決権行使をしません」というもの

3月期決算企業の定時株主総会招集通知はちょうど今ごろ、株主に届く。LIXILグループの株主にも招集通知が届いているはずだが、その封筒の中に「委任状」は「議決権行使書」と共に入っている。

「委任状」を理解するために、まずは「議決権行使書」について説明しよう。

今回の株主総会でLIXILグループは3つの議案を提案している。1号議案は、会社側が提案する取締役候補の選任。2号議案は、会社側と株主側の双方が提案している取締役候補の選任。3号議案は、株主側が提案する取締役候補の選任。

このうち、会社側と株主側の双方が提案しているという「2号議案の不思議」については後で説明するとして、議決権行使書はそれぞれの議案の賛否を問うていることをまずは理解していただきたい。

委任状はこの議決権行使をせず、「判断はお任せする」というもの。会社側が送って来た招集通知や議決権行使書に含まれている委任状を返送すると、会社の判断に委ねるという意思表示となる。会社側は「1号議案と2号議案に賛成し、3号議案には反対する」ことを求めているので、それが株主の意思となる。

一方、株主が株主提案に賛成する場合は、委任状を返送せず、2号議案と3号議案に賛成を書き込んだ議決権行使書を送るという作業が必要である。

さて会社側、瀬戸氏サイドの双方が「委任状を送ってほしい」と株主に呼び掛けていれば、「争奪戦」といえるが、瀬戸氏サイドは委任状を株主に送付していない。だからLIXILグループの株主総会は、厳密に言うと委任状「争奪戦」ではない。