十代で家族を養うという現実

夕食の時間が終わり、勉強の時間になって、高校生が勉強を始めると、われわれは何気なくそれをみて回り、自分が教えられそうな高校生の横に座って、徐々にアドバイスを始める。

特に決まり事はないが、理系の同僚は率先して物理や数学を勉強している高校生の横に座る。文系の私は社会や英語を勉強している高校生の横にしか座れない。最初はどんなふうに声をかけようか迷ったが、高校生たちは意外にも素直にアドバイスを聞いてくれる。むしろ声を掛けてくれるのを待っているのではないかと思われるくらいだ。

高校3年生で就職が決まっているからと、勉強はせずに、ボランティアの女性社員と話し込んでいる女子高生もいた。化粧やおしゃれに興味を持つ一般的な女子高生のように見えたが、後で聞いてみると、仕事を持たない親兄妹を、アルバイトで養っているという子もいたそうだ。まだ十代の彼女らが、家族を養い、満足のいく教育機会を得られず、漠然と未来に不安を抱えていると思うと心が痛んだ。

勉強の方法が分からなかったり、ゆっくり勉強できる時間が少ないだけ

高校生が自分で勉強しているところを見ると、やはり勉強の仕方が分からない高校生が多い。例えば、試験問題をそこから出すと学校の先生に配られたという、穴あき問題がたくさん書いてあるプリントの穴あき部分に教科書からそのまま答えを写しているだけの生徒がいた。他には、誰かがくれたという妙に難しい参考書に弱々しく下線を引いて読んでいるだけの生徒もいた。

「答えや内容を覚えてる?」と聞くと、「いえ、覚えてないです」と素直に明るく即答する。そこで、覚え方のコツを教えたり、問題を出してあげたりすると、どんどん覚えていく。要するに頭が悪いわけではない。勉強の方法が分からなかったり、じっくり勉強をする機会や時間が少ないだけなのだろう。

キッズドアの渡辺理事長が『子供の貧困』という著書で書かれているが、困窮家庭の子供の学力が低いのは塾などの有料教育サービスが受けられないからという理由ではなく、生活環境が悪く、勉強するのに適した環境ではないケースが多いのだ。

狭い部屋に家族みんなで暮らし、子供部屋どころか勉強をする机すらないという家庭の子供も珍しくない。そんな環境では満足に勉強をする時間さえ取れないだろう。ましてやアルバイトもしなければならないのだから。