韓国の若者は、海外就労への心理的ハードルが低い

イ代表は「自国での就職があまりに困難な実情もあり、韓国の若者は海外就労への心理的ハードルが低い。それで、候補国の1つとして日本にチャレンジする人は増えています」と話す。

韓国人向け、日本企業就職情報サイト「月曜日の東京」。ネーミングは「月曜に東京で働いているイメージをしてもらうため」。画像は一部翻訳。

日本向け就職支援講座も開催し、30人の受講者のほぼ全員が内定を獲得した。サイト経由でなくても「韓国で50社落ちた人が日本では一発で就職できたという成功事例も出てきた」(イ代表)と言う。

もちろん玉砕する例もあり、今はとりあえずの挑戦者が多い段階。ケーススタディーが増えるのはこれからだろうと予測する。

内定獲得の決め手として外せないのが、日本語能力。日本語は高校の選択科目にある場合も多く、素地があるため習得が早い。半年で日本語能力試験最上級(N1)を取得する人もおり、日本就労を目指す人々のポテンシャルの高さを感じさせる。兵役中の人からも、問い合わせが来るという。

軍隊内でスマホの使用が解禁されたことも大きい。新卒だけではなく、30代の中途採用希望者からの問い合わせも増え、日本就労の選択肢が韓国でじわじわと存在感を増していると言える。

韓国のコンサル企業は門戸が異様に狭く、学閥が固定化

ただ1つ、懸念されるのが、日韓関係がこじれるたびに報じられる反日感情の高まりだ。しかし西山氏は次のように話す。

「実のところ、韓国人の多くは“昔の日本”と“今の日本”を完全に分離して考えています。特に若い世代はその傾向が強く、日本人の考える“反日”感情を持っている人は実はそう多くありません」

むしろ、日本は韓国の就労希望者から見ると魅力的な点が多い。

「金融系でも韓国では経済経営系学部以外は受け付けないのに対し、日本は専攻をそこまで厳しく問わない。外資系コンサルも、韓国では門戸が異様に狭く学閥が固定化されていますが、日本はそうでもない。こちらのサイトにも、コンサルに行きたい高学歴者はかなりいます」(イ代表)

企業側にとっても、グローバル採用を通じて、各国であぶれたエリート人材にアクセスすることができ、需給がマッチしていると言える。

イ代表と西山氏は、今後はよりローカルで韓国人にわかりやすい就職情報を提供できればと話す。両国の問題は単独ではなく、人材交流の中で相互的に解決がなされていくのかもしれない。

(撮影=安 宿緑)
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