お通しは日本人のサービス精神のあらわれ

居酒屋でお馴染みの「お通し」も、海外にはありません。そのため、お通しを前にして「注文していないのに……」と戸惑う外国人は多くいます。さらに、お通しは多くの店で別料金をとられますが、ほとんどのお店でメニューに表示されていません。そのため、会計時にその料金を請求された外国人客とお店の間でトラブルになることが増えています。

お通しは、注文を受けてから料理が出るまでの時間つなぎとして、「注文は帳場に通しました。料理が出るまでこれをつまんで先に一杯やっていてください」という意味で出す酒菜のことです。客の注文を店側が了解した証として提供され始めたため、「注文を通した」という意味から、お通しと呼ばれるようになりました。お通しには、日本人のサービス精神や律儀さが見て取れるのです。

蕎麦の風味は音を立てるから堪能できる

近年、「ヌードル・ハラスメント」、略して「ヌーハラ」という言葉が使われるようになりました。背景には、海外の食事マナーと日本の食事マナーとの違いがあります。

海外では、基本的に音を立てて食べることはマナー違反とされています。スープを飲むときやスパゲッティを食べるときに音を立てる人はいません。そのため、日本人がラーメンやうどん、蕎麦などを食べる時の、「ズズズッ」と麺をすする音が訪日外国人に精神的苦痛を与えているとして、「ヌーハラ」だと言われるようになったのです。日本人にとって麺をすするのは当たり前の食べ方のため、ハラスメントと非難されても戸惑ってしまいます。

外国の麺料理はスプーンやレンゲ、フォークなどを使って、巻きつけたり、すくったりして食べます。それとは異なり、日本は箸だけで食べるため、どうしても吸い上げる必要があるのです。

とくに蕎麦は、音を立てて食べることが、おいしく食べる最善の方法です。風味を大切にする蕎麦は、挽き立て、打ち立て、茹で立てという「三立て」の状態で味わうのが最も風味を楽しめる食べ方とされています。この時に、麺と空気を一緒に吸い上げてすすることで、より深く蕎麦の豊かな香りや味わいを堪能できるのです。

音を立てないよう、口に無理やり押し込んだり、蕎麦を途中で嚙み切ったりすれば、蕎麦の風味を十分に感じることができなくなってしまいます。そのため蕎麦の場合は、音を立てて食べるのが粋とされているのです。

このように、日本の麺料理を食べるときに音を出すのは不作法ではありません。むしろそれが料理の特性に合った食べ方なのです。