中国が「地方政府による補助金の見直し」を渋ったワケ

5月、中国は、技術移転と補助金に関する合意を後退させた。習近平国家主席にとって、圧力を強める米国の求めに応じることはできない。共産党の最高指導者が米国に屈したとの見方が広がれば、同氏は弱腰と批判されてしまう。それは、支配体制の強化にマイナスだ。

中国経済が成長の限界に直面する中、補助金政策は、国家主導による経済運営=国家資本主義のために欠かせない。補助金の支給は、IT先端企業の研究開発力などを高めて「中国製造2025」を達成する要である。

加えて、補助金は、中国国内の需要刺激にも用いられる。まさに、"補助金なくして国家資本主義成り立たず"である。中央政府による補助金削減を認めた中国が、地方政府による補助金の見直しを渋ったのはこのためだ。

2020年の大統領選挙までに対中交渉にめどをつけたい

5月9日と10日の米中交渉は、双方の対立の根深さを浮き彫りにした。米中の貿易戦争は、長期化に向かう可能性が高まった。6月にはG20首脳会議に合わせて米中の首脳会談が行われ、そこで両国が歩み寄ることも考えられるが、先行きは不透明だ。

米国は、中国からの輸入品の残りすべてに対する第4弾の制裁関税を準備し始めた。米国は圧力をかけ、中国に譲歩を迫るだろう。同時に、第4弾の制裁関税が対象とする中国製品の4割が、スマートフォンなどの消費財だ。制裁関税引き上げは、米国経済を支える個人消費を減少させる恐れがある。夏場には2020年の大統領選挙戦が本格化する。トランプ氏としては、それまでに対中交渉にめどをつけたい。

中国はそれを念頭に、米国との交渉に臨むだろう。中国は時間をかけて米国がしびれを切らすのを待ち、国家資本主義体制の維持と強化に影響が及ばないようにしたい。米中交渉は一筋縄には進まないだろう。