打ち上げ費用は政府主導の100分の1で済む

従来、わが国のロケット開発は、政府主導で大規模な予算をつけて進められてきた。旧科学技術庁(現、文部科学省)傘下の宇宙開発事業団などを母体とするJAXA(宇宙航空研究開発機構)が中心となり、国内大手企業が連携して大型・ハイスペックのロケットを開発してきた。

毎年、JAXAには2000億円近い予算が割り当てられる。これは国の予算だ。民間の企業と異なり、JAXAには資金が豊富にある。その分、事業の採算性、効率性を高める発想は働きづらい。

国産H3ロケットの打ち上げ費用は約50億円に達する。これは、H2A型ロケットの約半額だ。米国会計検査院(GAO)の報告では、JAXAの手掛けるロケットの発射費用は、中国、インド、ロシアなどよりも高い。

これに対して、ホリエモンロケットの打ち上げ費用は、約5000万円だという。この“激安ロケット”の機能がさらに高まれば、わが国の宇宙ビジネスは大きく成長する可能性がある。

「宇宙をより身近に」というアニマルスピリッツの勝利

ISTに出資した堀江氏は、「民間企業にとって採算性が重要。最低限の性能を備えた小型ロケットを運航できれば、従来よりもお金をかけずに宇宙に行ける」という趣旨の発言をしている。この考えには、一理ある。世界的に小型ロケット開発が進む中、需要を取り込むには、コストと信頼性の確立が欠かせないからだ。

世界的な小型ロケットの開発競争に適応し、わが国の競争力を高めるには、民間の活力を引き出す必要がある。「宇宙との距離を縮めたい」という思いに突き動かされ、限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)を最大限に発揮して小型ロケットの打ち上げ成功を実現したISTの活力には、学ぶべきところが多い。

企業が成長を実現するためには、「アニマルスピリッツ(成長や富を追求する血気、野心)」が欠かせない。アニマルスピリッツの考えを提唱した英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、成功や富を追求する人々の野心や血気が経済活動を活発化させ、成長を支えると指摘した。

ホリエモンロケットが生み出された背景には「ロケットを打ち上げ、宇宙をより身近にしたい」という堀江氏やISTメンバーのアニマルスピリッツがあったのだ。