シリコンバレーでは「主体性」が交じり合う

多様性が競争力を高める好例はシリコンバレーです。シリコンバレーでつぎつぎと新しいビジネスが生まれるのは、最新の技術があるからというわけではなく、世界中から、技術者はもちろんのこと、科学者、ハッカー、起業家、投資家、デザイナー、芸術家など多種多様な人たちが「世界を変えてやろう」と集まり、交じり合っているからです。

ポイント(2)の「主体性」は、自分の意見や判断にもとづいてやりとりする態度です。言われたことのみをこなすだけの指示待ちや、上の意向をひたすら推し量って対応する忖度とは、正反対の態度です。

もちろん、やみくもに自己主張をすればよいというものではありません。相手の主体性も認めて、おたがいに主体性を尊重し合うことが必要です。

日本では、幼いころから「わたしは」ということを抑えられて育ちますから、主体性を持つことが容易ではありません。ましてや、役職や入社年次など、上下の身分関係が強く現れている会社や組織では、自分の意見を述べにくくなります。しかし、このことをなおざりにしては、対話が成り立ちません。

専門家ほど「傾聴」する態度が重要になる

オープンダイアローグには、相手の主体性を尊重し、その話をよく聴く、ポイント(3)の「傾聴」が不可欠です。声や音を耳で感じ取る「聞く」(hear)ではなく、注意して耳を傾ける「聴く」(listen)です。

カウンセリングの神様とも呼ばれる臨床心理学者のカール・ロジャーズさんによると、カウンセラーは、多くの知識を持っていたり、その道の権威であったりすることは必要ありません。むしろそうしたことで、クライアント(患者)の話を素直に聴けなくなってしまうのです。大切なのは、カウンセラーがクライアントに対して傾聴する態度をとることであり、これはビジネスにおいても同様です。