細分化された組織はコミュニケーション不全になる

生産性や創造性の低化が見られる日本の組織の多くの問題は、ここに起因します。細分化された組織は独白に陥り、コミュニケーション不全になってしまうのです。

鈴木隆『仕事に効くオープンダイアローグ 世界の先端企業が実践する「対話」の新常識』(KADOKAWA)

日本を代表する政治学者である丸山眞男さんは『日本の思想』において、日本の学問は「タコツボ型」であり、欧米は「ササラ型」である、と図式化しました。1本の縄で並列につなげて使うタコツボには共通の根元がなく、ツボがそれぞれ孤立しています。タコツボと対照的なのが、竹の先を細かくいくつにも割ったササラです。食器の洗浄などに使い、共通の根元から細かい枝が分化しています。

欧米では、包括的・総合的な学問から専門化が進んでゆきました。日本は、欧米ですでに専門化していた学問を明治になって取り入れました。その結果、日本では、共通の基盤のないかたちで専門が分かれ、それぞれ仲間集団をつくり、お互いにことばが通じなくなっています。企業などの組織でも学問と同じような状況となっています。

専門や自説は留保して多様な人の話をじっくり聴く

タコツボ化した組織や専門の壁を越えるためには、対話することが必要です。組織や専門にこだわらず、オープンに対話するようにしなくてはなりません。利害や感情、知識、先入観などにとらわれない素直な心で、話し合うことが大切なのです。

対話は、会話や議論とは異なる話し合いとして、使い分けるのがおすすめです。話し合いは、(1)会話で交流し、(2)対話で探究し、(3)議論で決定する、という流れに応じて使い分けます。

対話は、あるテーマについて、いっしょに知恵を絞って探究し理解することを目的とします。お互い対等な立場で、相手のことを尊重し、衆知を集めて広く深く考えるのです。日本では、タテ社会として上下の秩序を重んじ、イエ社会として満場一致の決定を是とすることから、とりわけ対話が阻害され欠落してしまう傾向が顕著です。

ビジネスにおいてオープンな対話がうまくいくためのポイントは5つあります。(1)多様性(ダイバーシティ)、(2)主体性(サブジェクティビティ)、(3)傾聴(リスニング)、(4)質問(クエスチョン)、(5)内省(リフレクション)です。

ポイント(1)の「多様性」は、社員一人ひとりが持つ違いを受け入れ、多様性を活かすことで新しい意味(価値)を生み出し、組織の競争力を高めます。