街中で「だれでもトイレ」と書かれた多機能トイレを見かけることが増えた。車いすや人工肛門・人工膀胱の人に必要な設備が整っている。だが、そうした人の約9割に待った経験があるという。なぜ数が足りないのか。サービス介助士インストラクターの冨樫正義氏が解説する――。

「多機能トイレ」には何があるのか

私は、サービス介助士インストラクターという仕事をしています。サービス介助士とは、主にサービス現場で、障害のある人や高齢者がお手伝いを必要としているときに、すぐに手伝えるように、基本的な介助技術を学んだ人のことです。本稿では、サービス介助士インストラクターの立場から、多機能トイレについてご説明します。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/y-studio)

最近、商業施設や公共交通機関などで、多機能トイレを見る機会が増えてきたと思いませんか。多機能トイレとは、車いす使用者でもオストメイト(人工肛門・人工膀胱の保有者)でも小さな子供連れでも、誰もが使いやすい設備と広さを備えたトイレです。ユニバーサルデザインの一つと言えるでしょう。

ユニバーサルデザインとは障害の有無・年齢・性別・国籍・人種などにかかわらず、誰もが使いやすいように、あらかじめ都市や建物、生活環境を計画することです。実際「どなたでもご利用いただけます」と表示している多機能トイレもあります。

多機能トイレにはどんな設備があるのでしょうか。基本設備は車いすで利用しやすい十分な空間、容易に開閉できる戸のある入り口、手すり、オストメイト対応の水洗器具、施錠操作のしやすいカギです。さらに大型ベッド、乳幼児用いす、乳幼児用おむつ交換台、温水洗浄便座、呼び出しボタンなどがある場合もあります。

人工肛門・人工膀胱保有者も使う

この多機能トイレはどのような人が必要としているのでしょうか。まず車いす使用者です。もともと多機能トイレは車いす使用者のためのトイレでした。車いす使用者には、十分な間口があり、引き戸になっている入り口、車いすでスムーズに回転できる広さのトイレが必要です。車いすから便座への移動や座位の保持に使う手すり、低い位置からでも見える鏡も車いす使用者のために設置されています。

オストメイトも多機能トイレを必要としています。オストメイトとは大腸がんなどの病気や障害などが原因で、人工肛門・人工膀胱を保有している人のことです。オストメイトは、排泄を自分でコントロールできないので、排せつ物を受ける袋をお腹の外側につけています。その袋にたまった排せつ物の処理をしなければならないため、外出時に身体や衣服の洗浄等ができるトイレが必要です。その洗浄のためのシャワーとシンクのセットがあるのが、オストメイト表示のあるトイレなのです。

その他、視覚に障害のある人が使用することもあります。温水洗浄便座の操作盤に点字があり、ペーパーホルダーや流すボタンの位置について基準がある多機能トイレの方が使用しやすいからです。一方で、トイレ全体のレイアウトが一定ではなく、どこに便座があり、どこに洗面台があるのか分かりにくいため、一般の個室の方が利用しやすいという声も聞きます。