母親のお腹の中に宿ったとき、あなたは単細胞生物だった

こうして今あなたはついにこの世に生を受けて、地球上に出現した。考えてみればこれは、とてつもなくすごいことである。何しろ、あなたがこの世にいるということは、地球に生命が誕生してから、一瞬たりとも途切れることなくあなたに引き継がれたということだ。

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生命の歴史の中で、何度も困難な災害が地球を襲った。何度となく過酷な環境に晒された。そして、多くの生命が滅んでいったのである。わずかな生命しか生き残らなかった大事変も、何度も経験している。それなのに、あなたにつながる祖先は生き抜いた。生き残った。そして、命のリレーをつないだのである。次から次へとバトンは受け渡されてきた。だから、あなたはここにいるのだ。これを奇跡と言わず、何というだろう。

「個体発生は系統発生を繰り返す」と言われる。

母親のお腹の中に最初に現れたあなたは、どんな姿だっただろうか。魚類とも両生類ともつかないおたまじゃくしのような姿だっただろうか。そうではない。母親のお腹の中に宿ったとき、あなたは単細胞生物だった。たった一個の卵細胞に、やってきた精子が入り込んで受精をする。

私たちの祖先が単細胞生物であったように、最初に生命を宿したとき、あなたもまた、一個の単細胞生物だったのである。そして、あなたは細胞分裂を繰り返していく。一つだった細胞は二つになり、分裂して四つになり、八つになり、十六になる。今、あなたの体は七十兆個とも言われる細胞から作られているが、そのすべての細胞は、こうして分裂していったあなたの分身なのだ。

こうして、細胞分裂を繰り返し、あなたは多細胞生物になった。やがて球状だったあなたの体は、へこみができていく。生物は筒状に進化し、内部構造を発達させた。まさにその過程を踏んでいるのである。

そして、あなたは、尻尾をもった魚のような形になる。やがて尻尾は退化していく。このとき、手の指は七本ある。これは、おそらく地上に上陸したばかりの頃のなごりだ。やがて、二本の指は退化して、五本指となる。人間の妊娠期間は十月十日。しかし、その間に長い長い生命38億年の歴史を繰り返して、あなたは生まれたのだ。あなたのDNAの中には、生命の歴史が刻まれている。

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