客とのトラブル、身内が事件を起こした……

大事な顧客とのトラブルや非行もまた“致命傷”になります。

●介護施設で、利用者に対してたたいたり「早く死んでしまえ」と怒鳴ったりするなどの虐待をしていることから、解雇予告手当を払って即日解雇した(正社員女性)

もちろん、組織のためを思っての行為であっても、犯罪まがいのこともNGです。

●店長。前店長から引き継いだやり方として、売上金の一部をプール(売上金除外)して、文房具等の代金の支払いに充てていた。その後、社長から売上金除外を注意され、さらに業務上横領を理由に即日解雇された。横領の意思はなく、売上金除外は前店長時代からあり、自分だけ処分を受けるのは納得できない(正社員女性)

頻繁な欠勤や休み、いじめやセクハラ、パワハラなども解雇の要因となるのは容易に想像がつきますが、以下のように、仕事とはまったく関係ない私生活上の行為をとらえて解雇されてしまった事例があります。前者は特に、濱口氏も指摘する「刑罰が親族にまで及ぶ」日本の会社ならではの特色といえるでしょう。

●本人の父が事件を起こしたことを理由に、自宅と職場が同じ市内にあり、何かあるといけないからと、マネジャーから解雇を言い渡された。いったん社長の配慮で取り消されたが、自宅待機を命じられ、次の勤務地についてマネジャーと話し合ったが、受け入れられなかった(非正規女性)
●同僚の元妻と同棲していることが発覚し、同僚との間で警察沙汰の騒ぎとなる。勤務の継続が事実上不可能となり、約2カ月先付けの解雇を告げられた。そのすぐ後に、勤務中、交通事故を起こし、車両を破損したため、その弁償を求められるとともに、解雇日を1カ月前倒しされた(正社員男性)

トラブル解決には裁判よりも「あっせん」

日本の雇用終了』の特徴は、民事訴訟ではなく、厚生労働省の地方組織である都道府県労働局を通じた「あっせん」の事例を紹介しているところにあります。

あっせんとは、紛争当事者たる企業と労働者の間に、弁護士、大学教授などの労働問題の専門家が入り、双方の主張を確かめ、調整し、話し合いを促進することによって、紛争の解決を図ることをいいます。裁判に比べ手続きが迅速かつ簡単であり、しかも無料で利用できるのが特徴です。手続きは非公開で、当事者のプライバシーは保護されます。