「島ぐらし2.0」だから最新テクノロジーも充実

【4:Airbnbやドローンが活躍中、そして「海のUber」も】

都市部にあるAirbnbは既存のホテル業界と競合することもあり、宿泊施設としての評価は必ずしも高くないが、既存ホテル産業のない島では歓迎されている。「墜落したら危険」と都市部では禁止されることが多いドローンも、たくさんの島がある瀬戸内海では「ドローンによる小規模物流」のベンチャー企業が存在し、おおむね歓迎されている。さらに、「2019年瀬戸内国際芸術祭」では「海のUber」とでもいうべき「スマホアプリで手配できる個人旅行客向け海上タクシー」も企画されている。

既存産業がなかった分、一気に最先端テクノロジーを導入できる可能性を「島ぐらし2.0」は秘めている。

女木島の海岸とアート作品(撮影=筒井冨美)
【5:成功の基準は自分で決める】

「島ぐらし2.0」実践者たちの目標は、必ずしも世間一般の「成功」とは一致しない。前述の平井夫妻は自作の楽器と映写機を使ったパフォーマンス・アーティストだが、武道館コンサートやミリオンセラーの印税収入を目標にしているわけではない。むしろ、島を訪れる数十人の顔の見える観客に作品を披露して、双方向のコミュニケーションを持つことに満足しているようだ。

その他、島の畑を荒らす猪を駆除するだけではなく解体して旨いベーコンに加工する、地面飼いの鶏から健康な卵を採る、天日干しで塩を作る、など自分だけのオリジナルな楽しみを追求する者が多い。

「島ぐらし2.0」実践者の多くはブログやSNSを開設してはいるものの、PV数を競うわけではない。グーグルの「AdSense」やアマゾンの「アフィリエイト」などの広告はないし、noteなどで小銭を稼ぐ移住者も見当たらない。

【6:島人と移住者、子はかすがい】

本当に移住しようとする際、地元民とうまく人間関係が作れるかという点に不安を抱くが、現状ではその点に関するトラブルの話は聞こえてこない。なぜなら、地元民は高齢者が多く、30代ぐらいの移住者は嫁姑を超えて孫のような存在だからだ。例えば、平井夫人が島で懐妊した時には、「ウチの集落で10年ぶりの赤ん坊が誕生するぞ」と、曽孫でも授かったかのように地元のおじい・おばあが大喜びしたそうだ。

瀬戸内に浮かぶ男木島のような総人口100人強の島では、子連れファミリーが3世帯移住するだけで、島の空気が一気に活気づいたそうだ。2011年に少子化で閉鎖された男木島小中学校も2014年に再開された。2016年には同校の敷地内に保育園が併設されたので、0~15歳が集うユニークな教育施設となった。ここでも「子はかすがい」のようである。

以上が、「島ぐらし2.0」の特色だが、彼らのライフスタイルはこれから他の地域へと普及する可能性が高いと筆者は予想している。なお、下記は筆者が独断で選んだ、4、5月の大型連休に「島ぐらし2.0」を体感できるスポットである。