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野球レベルが比較的低いからこそ、剛速球投手が生まれる

東北6県の高校は甲子園では春も夏も一度も優勝していない。最近では全国から好素材をスカウトし強化に努める私立校が増え(※)、レベルは上がってきているが、データで見れば野球後進地域といわざるを得ないだろう。にもかかわらず、これだけの好投手が出ているのだ。

※現シカゴ・カブスのダルビッシュ有は中学まで大阪だったが、高校は宮城の東北高校に進学。また野手では、兵庫県伊丹市出身の読売ジャイアンツの坂本勇人は青森の光星学院高に進学した。

もっとも好投手はレベルがさほど高くないところでも生み出すことは可能だ。

少年たちにキャッチボールをさせると、他の子とは比べものにならないほど威力のあるボールを投げる子が現れることがある。先天的に地肩が強く、強靱な下半身を持ち、なおかつ全身の筋肉、そして肩、ヒジ、手首を含めた関節を連動させてボールに力を伝えるセンスを持つ投手向きの素材だ。育てれば、彼のいるチームが強くなるのは確実で、投手を育てることに定評がある指導者に預けるわけだ。

一般的に野球の「打撃」や「守備」は、自分のほうにやって来るボールにどう対応するかのリアクションの技術が重要になる。ということは、野球レベルの高い地域やチームで試合経験を数多く重ねることが上達の条件だ。一方、「投球」はそうした経験も大事だが、何より打者をねじふせる威力あるボールを投げ込めるかどうかがいい投手の条件となる。

岩手を含む東北の野球レベルは、他地域に比べやや劣るといわれている。だが、東北は「野球の勝敗は、投手の出来で決まる」というシンプルな法則が生きており、投手向きの好素材の人材を大切に育て、大成させようというカルチャーがある。そうした土壌ゆえに、大谷や菊池、そして佐々木が生まれたのではないだろうか。

チームがあまり強くないから連戦連投による肩の消耗が少ない

加えて東北ならではの特性もある。

東北の冬は厳しい。日本海側は雪で覆われるし、太平洋側だって寒くてまともな練習はできないだろう。そういう時期は走り込みをするしかなく、それによって強い下半身と精神力が養われる。より球威あるボールと粘りの投球を支える強い気持ちが獲得できるのだ。

さらに東北では、夏の甲子園の県予選などで、投手の生命線である肩の酷使が避けられる傾向にあることも「大器」を量産する背景にある。先ほど、強化のために他県から野球留学の生徒を受け入れる私立校が多くなっていると書いたが、東北の場合、それは各県2~3校。そうした「強いチーム」の打者相手には全力投球が求められるが、それ以外のチームには余力を残して勝てるケースもあり、省エネ投球ができる。

昨年夏の甲子園の金足農業はチームが勢いに乗って決勝まで勝ち上がったため、吉田投手は限界近くまで投げざるを得なかった。だが、本来なら東北勢は甲子園の1、2回戦で負けることが多く、肩の酷使は避けられる。そう考えれば、むしろレベルが比較的低い東北だからこそ、のちに大成する好投手が出やすいといっていいかもしれない。