そもそも、大事なことが、会社研究本には書かれていない!

<div>海老原嗣生氏</div>
海老原嗣生氏

改めて、学生のみなさん、大学の教職員のみなさん、キャリアカウンセラーと呼ばれる方々にお聞きします。

あなたは、何をもとに、会社を選んでいますか? または会社をすすめていますか?

ここで、「仕事内容」「やりがい」と言う人に対して警告をしたいのです。たとえば、広告営業がしたくて広告代理店に入社した人がいたとします。その配属先が、経理だったり人事だったりしたらどうするのでしょうか? 「なに、しばらく待てばいつかは広告営業になれるさ」とでも言うのでしょうか。

もうひとつ大きな問題があります。

「仕事で会社を選んで」、もしその仕事が合っていなかったらどうすればいいのか、ということです。未経験の学生が、本当にその仕事に合っているかどうか、は全くわからないものです。

日本の会社とはよくできたもので、配属後、こうした業績が芳しくない(=向いていなかった)人たちに対して、再チャレンジの仕組みが整っています。それが、定期異動。これにより、たとえば広告営業で目が出ない人が、インターネット・コンサルに移って成績が急上昇したり、もしくは、営業から内勤になって日の目を見たり、ということになります。

では、「仕事」で会社を選んだ人たちは、この定期異動をどうすればいいでしょうか。

「これは僕の目指す仕事ではない」と着任拒否をして、退職するのでしょうか? そうすると、大変おかしなことになります。なぜなら、彼は「仕事」で会社を選ぶはずだから、次の仕事も「広告営業」を選ぶでしょう。しかし彼はその仕事で成績を残せなかった=向いていないという事実があります。これはパラドックスになりますね。向いていないのにそこしか行かないという二律背反……。

普通に考えれば、異動を受け入れるしかないということになります。さあ、この場面で何が起きるでしょう。仕事が変わってしまう、上司も同僚も変わってしまう、ともすれば、働く地域さえ変わる。何もかも変わってしまうなかで、変わらず共通なものは何か。

それは、社風や会社のカラーといったものだけ、といえるでしょう。

そう、社風や会社のカラーで、就職を決めた人は、どんなに異動があっても、それなりに馴染んで会社生活を送ることができます。ところが、仕事で会社を選んだ人は、どこに異動しても浮かばれない(つまらない)毎日となる……。

日本型雇用の利点でもあるこの当たり前の事実が、あまりにも軽んじられてきました。

私は、ここに異を唱えたいのです。俗に「就社ではなく就職を」と声高らかに謳う就活指導が全盛ですが、そんなもの、クソ食らえでしょう。