青白い顔が2週間で笑顔に変わった!

その彼が、わずか2週間後に、いつもの明るい笑顔で、再び私のところを訪れました。今度は、合格の報告。しかも、3社受かってどこにしようか、悩んでいるといいます。いずれも、規模・待遇・業界内での地位ともに文句のない3社でした。

なぜ、こんなにも短期間に状況は好転したのか?

そのきっかけは、私のこんな一言でした。

「なぜ、メーカーとIT企業(システム開発)を受けないの?」

4月中旬というと、IT系の大手企業はまだ募集を続けています。それも、伊藤忠テクノソリューションズ、日立情報システムズ、日揮情報システムなどの大手グループ企業や、アグレックス、ワークスアプリケーションズなどの独立系上場企業など、そうそうたる顔ぶれです。メーカーも、トヨタ自動車やソニーなどの人気上位企業はすでに募集終了となっていましたが、学生には馴染みの薄いBtoB(企業向け取引)系の一部上場の超大手企業(たとえば従業員数5万人のフジクラとか、同1万2000人の日本発条グループとか)はまだ、採用窓口を開いています。

こうしたところを彼は全く受けていなかったのです。

そして、この2業界こそ、彼の受けるべき企業群でした。なぜなら、必ず彼は、これらの企業から引く手あまたとなるはずだから。

私のこの見立ては、たった2週間で見事に実証されることとなります。

では、なぜ、私は彼がメーカーやシステム開発に向くと思ったのか。この部分は次章で詳細に書くことにして、ここでは、もう少し大事な基本を押さえておきます。

いいですか?

就職指導の本を読んだり、アドバイスを聞いたりしていると、とんでもない勘違いが横行しているのに気づきます。

「企業は、自律的に行動できるタイプを好む」

「課題解決能力はもちろんだが、最近では課題発見できる力が重んじられる」

「統率力・リーダーシップを端的に示すような話が効く」

こんな見当ハズレな無理難題が学生たちに課されているのです。

そこには、当世企業が好むような「どこでも受かる黄金の学生」像があり、その形にはまれば、どんな難関だって突破できる、というような浅はかな考えが透けて見えます。あたかも“就活偏差値”のような一律のモノサシがあり、そのモノサシ上で点数化されて、上位学生はどこを受けても受かる、下位学生はどこでも落ちる、というような誤解があります。

そう、誤解です。全くのデタラメなのですね。

確かに、モソモソとやる気のない受け答えに終始することや、意味不明瞭で論理のかけらもない話を長々とする、というのはどこの企業を受けても不合格となるでしょう。こうした最低限のコミュニケーションルールはもちろん指導・改善するべきですが、それ以上に本人の持ち味まで「改造」する必要などさらさらありません。

なぜか? 簡単なことです。企業によって欲しいタイプが全く異なる。だから、「黄金の学生」になどなる必要はない。