残業禁止で、やりたい仕事ができません
会社は2020年の自動運転実用化の達成を目指すと宣言しています。その実現に向け担当分野で全力を尽くしたいのですが、22時になると帰れと言われてしまいます。もっと働きたいです。
【回答】
その働き方は自己満足にすぎません。開発など頭を使う仕事は1日に2時間×3~4セットが限界です。これは世界の脳科学者が解明しています。たしかに仕事に長時間没頭したり、徹夜したりすると達成感は得られます。しかし、これは脳がホルモンを出して脳自体を守る仕組みで、モルヒネに似た「幸せホルモン」が脳を麻痺させているのを達成感と勘違いしているだけ。実際、どれだけ創造性につながっているかは大いに疑問です。
米国のシリコンバレーで開発の仕事に携わっている人と話していると、「30年間、毎日3時間以上働いたことはない」とか「5時間以上働くのは無理だな」と言う人がたくさんいます。創造的に働いている人の実際の労働時間は意外と短いのです。まずは、脳科学の見地からもっと脳の使い方を学んでほしいですね。
また、働く時間に制限を設けることで、仕事の生産性を上げ、自分の成長につなげることもできます。何年かけてもいいから自動運転の開発をしてくれと言われたら一生実現しません。人間、制限を加えられるから、仕事のやり方を工夫する。そうでなければ仕事のやり方は変わりません。人間は基本はナマケモノで、何も変えたくない動物ですからね。
部下が正解しか求めず、なかなか成長しない
部下を早く帰さなければならず、仕事を任せるときにやり方の答えを細かく教えるようになりました。部下も毎回答えを求めてきます。本当は自分で試行錯誤するなかで成長してほしいのですが、余裕がありません。
【回答】
管理職失格ですね。早く辞表を出したほうがいい(笑)。部下に残業をさせられなくて、部下を育成する時間がなくなったというのでは管理職の本分を果たしていません。使える時間のなかで時間配分するのが管理職の仕事ですから。
管理職に余裕がないのは、上司が「無限大」の幻想にとらわれているから。時間は無限で、部下もいっぱいいる。どんどん仕事を頼んだらいい。これが無限大の幻想です。そんな上司に「考え方が間違っている」と言っても理解できないでしょうから、こちらも「無(む)・減(げん)・代(だい)」の作戦で対抗します。
何をするかと言えば、まずは上司の指示を「無」視する。上司は思い付きで話していることも多いので、同じことを3回言われるまで無視してみる。それでも指示されたらその仕事の量を「減」らします。10枚のレポートも、2枚で十分だと思うなら2枚に減らすのです。そして最後の「代」は使いまわし、代替です。資料をゼロからつくるのではなく、極力以前作成した資料を使う。もしかすると日付だけ替えて流用できる場合もあるかもしれません。この「無・減・代」で自分の仕事の時間を3割カットできれば、その時間を部下の育成に使えるはずです。