レヴィ=ストロースの見解

それにしても、なぜ私は田舎を好むのか? それは田舎には都会にない魅力があるからです。昔は田舎にはネガティブなイメージがありましたが、今は変わってきています。いや、今でもそう思っている人が多いのはたしかです。なぜなら、田舎は都会から離れているから不便だという固定観念があるからです。そして都会には色々なものがあるが、田舎にはないと。はたしてそうでしょうか?

私はそうは思いません。まず、都会から離れていても不便とは限りません。先ほども書いたように、交通はどんどん発達していますし、インターネットのおかげで田舎でもなんでも手に入ります。都会にいても買い物はアマゾンだけという人も増えています。それに田舎には何もないどころか、逆に都会にないものがたくさんあります。つまり田舎は都会のオルタナティブとして、もっと積極的な意味を持っているのです。

構造主義で有名なフランスの思想家レヴィ=ストロースは、未開社会をフィールドワークした結果、未開社会が必ずしも文明社会に劣っているわけではないことを明らかにしました。むしろそこには、「野生の思考」ともいうべき英知が宿っているのだと。

二項対立から抜け出すには離れ業が必要

それは私も感じます。都会は災害に弱いとか、窮屈だといいますが、反対に田舎は強靭さや、おおらかさに溢れています。ただ、誤解しないでいただきたいのは、何も都会より田舎のほうが優れているといっているわけではありません。田舎には田舎の良さがあると言いたいのです。その点はレヴィ=ストロースも同じです。しかし、レヴィ=ストロースの議論自体がそうなのですが、やはり両者を二項対立的にとらえている時点で、どうしてもどちらかに与した見方をしてしまいがちなのです。

私自身は都会と田舎のどちらも同じようにとらえたいのですが、そのためには両方に住むという離れ業が必要なのかもしれません。今、そうした離れ業が現実のライフスタイルとして流行りつつあります。それがデュアラーにほかならないのです。