桜田サイバー担当相は、ザ・日本のリーダー

また、これはリーダーに限ったことではなく、日本の若者は海外へ行きたがらない、と言われています。

これまで、海外で苦労して仕事を学んだ人たちが日本へ戻ってきても、実力に見合った正当な評価をされることはほとんどありませんでした。それどころか年功序列の社会で、海外で過ごした時間が「ブランク」になってしまう。また、海外仕込みの仕事のやり方やコミュニケーション法も、日本企業では「空気が読めない」と腫れ物に触るようにされ、プラスになるどころかかえって出世の妨げとなったのです。

そうした扱いや組織内の閉塞感が若い人に伝わり、海外へ出ていこうという意欲が失われているのでしょう。

そのうえ、日本では意思決定にとにかく時間がかかります。細かなことでも、なんども稟議書を通して会議を重ねる、というある種の文化に基づいてビジネスが行われています。また、とにかくリスクを避ける傾向にあり、イエスともノーとも言わず、結論を先送りにしがちです。

日本の文化では、失敗することが許されません。失敗すれば「おまえのせいだ」「辞めろ」などと叩かれてしまう。そのため、リスクを取って新会社をつくったり、新しい技術に命運を託したり、というような「賭け」に出ることができないのです。しかし、新しいことを迅速に取り入れることができないと、時代から取り残される一方です。

組織のリーダーのあり方も、運営方法も、意思決定の手順も、すべてこの国の文化に左右されています。

国会で「パソコンを使っていない」と答弁した桜田義孝サイバーセキュリティ担当大臣には驚かされました。本人の適性とは関係なく、年功序列と派閥にしたがって、空いていたポストにリーダーとして任命されたということなのでしょう。日本ならではの人事だと感じています。

アメリカでは、その道のスペシャリストでない人がトップに立つなどということはありえません。

例えばトランプ大統領。私は米国政治の専門家ではありませんが、彼の政治家としての是非はおいておいて、彼のある意味強引なリーダーシップは海外のトップらしいところではあります。

少子高齢時代、これまでの鎖国的なやり方ではもはや通用しないということは、誰もが知っているでしょう。

かつて、日本は産業、ものづくりの国だと言われました。まだその素晴らしさは失われてはいないと考えています。組織、ひいてはこの国のビジネス文化そのものを、根本から再考しなくてはいけない時代がきているのではないでしょうか。

ティモシー・ラングリー
ラングリー・エスクァイア社長
1953年生まれ。米ジョージア州立大学、東北大学大学院などを卒業後、村田製作所、政治家中山太郎議員(後に外相)の秘書などを経て、現在は日本にある外資系企業に勤める外国人社員およびその家族の各種アドバイザーを務めている。
(構成=梁 観児 撮影=横溝浩孝)
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