もう1つが「貢献の実感」。東日本大震災以降、自分の仕事が誰かの役に立っているか。若者は自分の役割を確認したいと切実に思っている。

「昔は、『君の仕事がいかに世のなかの役に立っているか』なんて部下に言う必要はありませんでしたが、今はそれを言語化し、伝えることが求められています」

成長の実感、貢献の実感という心の報酬に最近もう1つ加わったものがある。

「みんなが求めているのに供給されていないのが、さりげない労いの言葉です」

「頑張っているね」「助かるよ」という言葉すら欠如しているのが職場の実態なのだ。

褒める基本は挨拶にあり

少し高度になるが、西村さんが非常に有効だと感じているのが、褒めさせて褒めるという手法だ。どういうことか。

「『今度の新人で頑張っている子いる?』という感じで部下に聞き、誰かを褒めさせる。『○○君が頑張ってくれています』という返事には、『ちゃんと見てくれて、ありがとう』と、褒めたことを褒める。そして次にその新人に会ったときに『頑張っているらしいね、聞いたよ』と声をかける。すると、ああ、先輩は自分のことをちゃんと見守ってるんだ、となる。褒めのサイクルが回りだすとすべての人のモチベーションが上がるのです」

褒め言葉を口にするのはハードルが高いと感じる人もいるだろう。でも、褒め言葉を使わなくても、褒めることはできると西村さんは言う。

「それは相手の存在を認めることです。挨拶+一言、挨拶+ワンアクション。それをしてもらっただけで受けた側は自分の居場所がここにあると感じます。部下を自分で考え自分で行動できる人に育てる。これが教育の1つの目標。でも、自立させても孤立はさせないことが大切なのです」

西村貴好(にしむら・たかよし)
日本ほめる達人協会理事長
1968年、大阪府生まれ。「ほめて伝える」効果の大きさに気づき「ほめて結果を出す」ことを体系化した研修を開発。企業や学校で研修・講演を続けている。『ほめる生き方』など著書多数。
(写真=iStock.com)
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