孤独を感じやすい東京、実家、低収入

アンケートデータから、孤独を感じている女性たちのプロファイルをさらに掘り下げてみると、26歳女性で「とても孤独を感じる」のは「シングル」が6割、「専業主婦」が4割だった。シングルは親と同居していることが多く、交際相手がいない人が多い。学歴は専門学校・専修学校卒が多い。専業主婦の場合、夫と子供1人の場合が多く、夫の年齢(中央値)は27.5歳と1.5歳年上である。本人の学歴は大卒・短大卒が多い。

居住地をみると、シングルは首都圏か大阪府が多いが、専業主婦は全国各地に分散している。シングルの収入は100~200万円、300~400万円が多い。前者はパート・アルバイト、後者は正規社員である。専業主婦の場合、夫の収入は300~600万円が多く、なかでも300~400万円の層が最も多い。

孤独を感じる20代の女性の典型像は、「東京に住み、実家暮らしで、独身で交際相手もいない。彼女らの年収は200万未満が多く、将来に対しても不安が多い」ということになる。

「孤独死」という言葉はシニア像をミスリード

アンケート結果によれば、孤独の代表と思われているシニアは、そこまで孤独を感じていない。それはどうしてだろうか。

まず、年齢を重ねると、悩みが少なくなる。若い世代は将来の年金や健康保険などに不安を持ちやすいが、実際にシニアとなり年金生活が始まれば、思い悩むことより、何とかすることのほうが優先になる。

また、シニアは一人で生きていく、一人で解決する、一人で楽しむ能力もある程度身につけてきたので、「残されてさびしい」「相談相手が欲しい」「夫や妻にもっといろいろしてほしい」という他人との関係で生まれる「さびしさ」が減っているようだ。実際、夫と死別した70代の女性は、アンケートに対して、「一人でも運動・サークル・旅行などで忙しく、孤独なんか考える暇もない」と語っている。

若い女性が、「相談相手の不在」で孤独を感じるのに対して、シニアは「相談相手がいなくても解決できる」と達観できている人が多いようだ。

シニアに孤独というイメージがあるのは「孤独死」という言葉も一因だろう。だが孤独死は「一人で死ぬこと」を意味しているだけにすぎない。一人で生きていても、広い交友関係があれば、孤独を感じないだろう。孤独死という死の形からだけでは、判断できない。

今回のアンケート結果は、「一人暮らしの老人は孤独」「20代の女性は人生を楽しんでいる」という見方が、一面的であることを示している。当たり前のことながら「孤独」とは、社会や他者との関係の中で生じることを示していると言えるだろう。

(※1)mifは三菱総研が所有する生活者3万人、シニア1万5000人を対象とした、2000問からなる国内最大級のアンケートパネル。2011年6月からサービス開始。
(※2)MROC(Marketing Research Online Communities)は、ネット上のリサーチ専用のコミュニティに数十名から数百名の生活者を集め、掲示板、ブログなどのソーシャルメディアを活用して議論・意見交換をしていただき、マーケティングに役立つインサイトを抽出する手法。本稿の発言は、女性200名のコミュニティで「孤独」について議論から抽出したもの。

劉瀟瀟(りゅう・しょうしょう)
三菱総合研究所 研究員
中国・北京市生まれ。外交学院(中国外務省の大学)卒業後、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)(中国)に入行。その後、東京大学大学院修士課程に留学し、三菱総合研究所入社。専門は日中の消費市場動向。講演多数、首相官邸観光戦略実行推進会議有識者等。著書に『女性市場攻略法―生活者市場予測が示す広がる消費、縮む消費―』(日本経済新聞出版社)などがある。
(写真=iStock.com)
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