副業を禁止するどころか、社をあげて推奨する――。そんなユニークな会社が東京・代官山に存在する。社員数35人ながら7年連続増収増益を達成した「エンファクトリー」だ。限られたマンパワーを最大限に引き上げるための「専業禁止」とは、何か? リクルート出身にして、オールアバウトから分社・創業した加藤健太社長が、その狙いと効能をずばり明かす――。

本業より「収入が多い」社員も

2011年、総合情報サイトを運営する「オールアバウト」から分社化する形で創業したエンファクトリーの人材ポリシーは“専業禁止”。なんともセンセーショナルな旗印だ。

社員の山崎俊彦さんはパラレルワークとして、犬用の手作りグッズ・洋服を企画・製作し、インターネットで販売する。

「まず最初に言っておきたいのは、絶対に副業をしてくださいとか、兼業などパラレルワークをこなせる人だけを評価しますというメッセージでは決してないということです」

そう語るのは、エンファクトリーの加藤健太社長。では、その真意はどこにあるのか。

「専業禁止を打ち出した8年前は、副業禁止が当たり前の時代。そうした従来の考え方とは全く違うという意味合いを込めたかったのです。会社の基本姿勢としては、『やりたいことがあるなら、やってみればいい』というもの。会社がすべてお膳立てをして、レールを敷いてあげるというのは古いやりかた、時代と逆行することになると思いました」

とはいえ、どんな副業でもいいと考えているわけではなさそうだ。

「可能であれば、単にプラスアルファの給料をもらうためというだけでなく、今の会社ではできないことを社外でチャレンジする、自分の能力の可能性を広げるという視点で考えてほしい。つまり“複業”なんです。

もともと当社の事業は、Eコマースによるショッピング、プロフェッショナル人材のマッチング、そして自社サービスで培ったノウハウを活かした受託開発などであり、そのビジョンは『スモールビジネスに携わる人たちを応援していく』というもの。現在、専門家やフリーランスなど個人の方が約2万人、全国のつくり手(メーカー)約3000社とのネットワークがあります。社員自らもスモールビジネスを起こし、発展させていくような形であれば理想的です」

では現状、社員たちは会社の外でどのような成果を生んでいるのだろうか。

「現在、社員35名中23名がパラレルワークをしていて、1年前は複業全体で年商1億円ほどだったのが、いまや年商2億円を超えています。当社から得られる給料を上回る収入を上げているケースもいくつかあります」

たとえば、ある社員が始めた「ハリネズミカフェ」はテレビなどマスメディアでも取り上げられ、月商500万円、毎月の営業利益は200万円だという。ほかにもフィリピンに共同で会社を設立し、翻訳の仕事から輸入商まで展開しているケースや、一人でアパレルブランドを起ち上げたケース、現場にはほとんど顔を出さないリモート編集長に就任しているケース、防災コンサルタントとして活躍しているケースなどもあるという。