保険に入らない人の理由は?
一方、保険に入らない理由としては、「とにかく健康だから」「独身だから必要ない」といった現時点では必要ない派や、「収入が少なく経済的な余裕がない」「保険料が高い」「貯金や投資のほうを優先させたい」といった“保険料を負担したくない派”。
さらに、そもそも「保険の仕組みがわからない」「保険種類がたくさんありすぎてどれが自分に合っているか選べない」「検討はしているが……」などの“保険知識が足りない派”も少なくない。
ただし、彼らは、一応、保険の必要の有無を検討あるいは保険について何らかのアクションを起こした人々である。ところが、保険のなんたるかを知る以前に、保険に対して激しく拒否反応を起こし、入らないと決めている人々もいるのだ。
保険は「不幸の宝くじ」だから絶対に入らない人の論理
とある地方都市で夫(62歳)とともに商店を営む田中美智代さん(仮名・58歳)からご相談があったのは、筆者が講師を務めたセミナーが終了した後だった。
おずおずといった感じで、近寄ってきた美智代さんは、「夫が数カ月前に大腸がんになりまして……」と話し始めた。
美智代さんの相談内容を端的に言えば、夫ががんに罹患後の家計の見直しについてだったのだが、家計が困窮している大きな理由は、夫がワンマンで、すべてに対して非協力的な点にある。
これまでも美智代さんは、夫から必要最低限の生活費を渡されるのみで、収入がどれくらいか、貯金通帳の残高がいくらあるのか正確に知らされていない(おそらく、夫はそんなには貯めていないようだと美智代さんは言うが……)。
がんに罹患した後は、さらにその傾向が強くなり、「俺の人生は俺のモノだ。がんで、もうすぐ死ぬかもしれないなら、残りの人生は、好き勝手に生きる」と公言してはばからないのだという。
幸い医療費はそんなに大きな負担にはならなかったが、もし再発したら、またお金がかかるだろうし、夫が働いてくれないと経営している商店は回らず、収入がなくなってしまう。
子どもは3人いて、末子はまだ大学生。「子どもにまだお金がかかる時期だし、とにかく、お父さんに今何かあると本当に困るんです。でもとにかく自分勝手な人で、私たちのことなんか、まったく考えてくれません」と美智代さんは途方に暮れている。
さらに美智代さんを不安にさせているのが、夫が大の保険嫌いで、医療保険やがん保険はもとより、死亡保険にも入っていないことだ。
「自営業ですから、遺族年金もそんなにもらえないと聞いていますし、蓄えもそうあるわけではありません。もし主人に何かあった場合、私や3人の子どもたち、同居している義父母がどう生活していけば良いのか……せめて保険に入っていてくれていれば多少は安心なんですけど、主人は、昔から“保険は不幸の宝くじ”だからと言って、入ろうとはしてくれませんでした」と美智代さんは嘆いている。
夫の意見はこうだ。保険はギャンブルと同じで「胴元」である保険会社が絶対損しない仕組みになっている。働き盛りの人が死亡するといった偶然の不幸が発生すると、まとまったお金(保険金)が支払われる。死亡確率は低いので、たいていは元を取ることはできない。取れたとしても、それは幸せなことではない。それが保険という商品なのだ、と。
夫の考えも一理あるが、妻の気持ちもよくわかる。