試合中は絶対にネガティブなことは言わない

青木「自分の中で状況が悪いときに粘れるかどうかが大切です」

【三宅】では、いま日本に帰ってこられて若い選手と接するときも、できるだけポジティブな言い方をされているんですか?

【青木】はい。試合中は絶対にネガティブなことは言わないように意識しています。何があっても「絶対に大丈夫」という言葉をかけるようにしています。もし失敗したとしても「おわったことはいいから次、次、次」と。

そうはいっても、僕の場合はバランスが大事だと思っているので、全部を褒めるわけではないですよ。だから多少は改善点を指摘するなどしますが、それはあくまでも試合が終わったあと。やっぱりプロ野球って毎日試合があるので、いかにうまく気持ちを上げられるかって本当に大事なんです。

僕もいまだに打席に立つと怖くなるときがあるんですよ。長い間野球をやっているからこそ打てないときがわかるんです。それはだいたいが疲れから来る技術的なところですが、本当に打てなくなります。要は嫌でもストレスは毎日かかるので、試合中ぐらいはなるべくポジティブにしてあげたい。そういうのは考えているつもりです。

【三宅】青木さんといえば200本安打を2回も達成されているわけですが、そのコツはなんですか。才能と努力のどちらでしょう?

【青木】両方が不可欠だと思うのですけど、メンタルもすごく大事だと思います。自分のなかで状況が悪いときに粘れるかどうか。それは打席のなかでもそうです。わかりやすい例でいうと、マイナーリーグ(日本でいう2軍)に落ちるかどうかという状況もそうです。

僕もマイナーに落ちそうな時期は何回もありました。長くやっていれば「次に声がかかるのは俺かな」という状況がわかるんですね。そこをなんとか持ちこたえながら6年間やって来られたのは、やはりメンタルの面が大きかったと思います。

英会話の意外な効用

【三宅】メジャーとマイナーでは相当、待遇が違うのですか。

三宅 義和『対談(3)!英語は世界を広げる』(プレジデント社)

【青木】全然、違います。一度だけマイナーに落ちたことがあるのですけど、バスで12、3時間移動したり、そのままバスで寝泊まりしたりすることが普通の世界。そんな状況ですから、みんなとにかくメジャーにはいあがりたいし、メジャーに行った選手はマイナーに戻ってきたくない気持ちが強いんです。

あるときチームメートで足に肉離れを起こしていて、相当痛そうにしている選手がいて「早くトレーナーに言ったほうがいいんじゃないの?」と聞いたら、「そんなことをしたらマイナーに落とされる」と言うんです。実はその選手、マイナーで10年もプレイしてやっとメジャーに上がってきた選手なんですよ。だから、「あんなところに帰りたくない」と言って、足をテーピングでぐるぐる巻きにしてコーチの前では普通を装ってプレイをする。そういうマインドが大事なんだなと思いますね。

【三宅】世界での活躍を目指しているアスリートの後輩に、ぜひメッセージを。

【青木】やはり異なる環境にアジャストしていくために大事なことは積極性とか自信を持つことだと思うので、もしいま外国人教師の方から英語を教わっているなら、同時にそういう心構えも学んでいただけると本業でもいい結果につながりやすいと思います。そして外国の方々と触れ合うことを通して、人間的にもさらに大きくなってほしいなと思います。

【三宅】ありがとうございました。

青木宣親(あおき・のりちか)
プロ野球選手
1982年宮崎県生まれ。早稲田大学卒業。2003年ドラフト4位で東京ヤクルトスワローズに入団。最多安打、首位打者、盗塁王、最高出塁率、ゴールデングラブ等、数々のタイトルを獲得。2度のシーズン200安打以上達成は史上初。WBC、五輪など国際大会にも度々選出。12年、米メジャーリーグのミルウォーキー・ブリュワーズと契約。7つの球団で活躍し、18年、東京ヤクルトスワローズに復帰。日本プロ野球通算打率ランキング1位(2018年シリーズ終了時点)。
三宅 義和(みやけ・よしかず)
イーオン代表取締役社長
1951年、岡山県生まれ。大阪大学法学部卒業。85年イーオン入社。人事、社員研修、企業研修などに携わる。その後、教育企画部長、総務部長、イーオン・イースト・ジャパン社長を経て、2014年イーオン社長就任。一般社団法人全国外国語教育振興協会元理事、NPO法人小学校英語指導者認定協議会理事。趣味は、読書、英語音読、ピアノ、合氣道。
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(構成=郷和貴 撮影=原貴彦)