2000社の赤字会社の大半を再生した人物として知られる長谷川和廣氏。赤字に喘ぐニコン・エシロールをCEOとして再生したのを最後に、一線からは身を引いたが、71歳となる現在も、コンサルタント会社・CPI研究所所長として、今なお多くの赤字企業の再生に手を貸している。また、27歳からの仕事の気づきをしたためた「おやっとノート」を元に出版された『社長のノート』(かんき出版)はシリーズで20万部のヒット。ビジネスマンとしての豊富な経験を、意欲的に伝えている本である。そんな彼が、朝活生活を本格的に始めたキッカケは、43歳のときに患った脳内出血だった。

<strong>長谷川和廣</strong>●1939年、千葉県生まれ。中央大学経済学部を卒業後、数社の世界企業で代表取締役などの要職を歴任。また企業再生のプロとして、2000社を超える赤字会社の大半を立て直す。現在は会社力研究所代表として、赤字に悩む多くの経営者の相談に乗っている
長谷川和廣●1939年、千葉県生まれ。中央大学経済学部を卒業後、数社の世界企業で代表取締役などの要職を歴任。また企業再生のプロとして、2000社を超える赤字会社の大半を立て直す。現在は会社力研究所代表として、赤字に悩む多くの経営者の相談に乗っている

・健康なくして、いい仕事はできない

それまで外資系企業を渡り歩いていた私は、健康管理など一切していませんでした。体力にも自信があったので、ハードワークもいとわず、ストイックな仕事の仕方をしていたのです。ところが、倒れた後に会社に戻ると、自分の机もなくなっているような状態。たとえ仕事で結果を出しても、病気になってしまっては元も子もないということが骨身に染みました。

同時に「せめて、ゴルフくらいは70歳まで楽しみたい」という欲も出てきましたので(笑)、まずは10分早起きして体操をすることにしました。体操といっても初めのうちは、子どもの頃に習っていた古武道の呼吸法だけ。丹田(ヘソの下あたり)を意識して深呼吸するといったものです。ところが、これだけでかなり調子がいいのです。朝一番にちょっと体を動かすだけで、頭が活性化される実感がありました。そこで、古武道の形を取り入れたり、木刀を振るなど、今では毎朝40分の体操が日課になっています。

・頭と体は連動している

病気が治ってからは朝4時半に起床。自宅のある神奈川県の大磯から都内までは1時間半くらいかかりますが、毎朝の体操のおかげで、それ以来1回も欠勤なし。駅の階段は70歳をすぎた今も一段抜かしで駆け上がりますし、運転中に追突されたときもケガはしませんでした。人間はある年齢から関節の可動域が狭くなってきますが、体操のおかげで老化のスピードもかなりゆるまっている気がします。

朝は誰にも邪魔されない時間帯。有効に使いましょう。27歳のときからつけてきた「おやっとノート」の整理もこのとき。内外の新聞も要チェックです

朝は誰にも邪魔されない時間帯。有効に使いましょう。27歳のときからつけてきた「おやっとノート」の整理もこのとき。内外の新聞も要チェックです

健康面以外でも早起きのいいところは、いっぱいあります。私の場合、通勤時間を仕事の準備に充てることができたのが最大のメリットでした。

仕事での気づきを書いた「おやっとノート」の中で大切な部分をパソコンに入れてレジュメ化。会議や重要な意思決定の参考にしています

仕事での気づきを書いた「おやっとノート」の中で大切な部分をパソコンに入れてレジュメ化。会議や重要な意思決定の参考にしています

27歳の頃から、私は「おやっとノート」というものをつけています。仕事や新聞、本などで、「おやっ」と思ったことをノートにつけ、考察を繰り返すことを習慣にしていたのです。18年ほど前から通勤は、ノート型のパソコンを使用して、この「おやっとノート」をデジタル化したり、このノートを元に資料や企画書などを作成する時間に充てていました。今では当たり前の風景ですが、当時は誰もそんなことをしている人はいませんでしたよ。すぐ電池が切れしてしまうのには困りましたが……。

しかし、こういう生活をしていると、出社したときには体も頭も臨戦体制になっているから、すぐに100パーセントの力で働けます。特に、朝一番から大きな声が出せるというのは、リーダーシップという点からも重要。

再生が必要な会社の社員の中には、猫背でうつむき加減の人が多い。これが顔を上げて笑い声が出るようになると再生は半分成功したようなもの。そのためにはリーダーが、朝一番、元気に振る舞えなくてはなりません。

早起きすると、「仕事の先手をとる」ことができます。自分の手で時間をつくり出すことができる朝活は、これからの荒波を生き延びるビジネスマンにとって、決してムダなことではないのです。

(野地秩嘉=著 写真撮影=大沢尚芳、山口典利、田辺慎司)