ノンアルコールビール市場は堅調に推移

ハイボールや缶チューハイの人気、およびキリンのPB対応戦略を踏まえると、どのブランドのビールを飲むかよりも、飲んだ際の満足感(ほろ酔い気分など)が得られるか否かに基づいて購入を決定する消費者は多いと考えられる。

健康志向の高まりからビールを控え、ノンアルコールビールなどを求める人も増えている。サントリーの調査によると、ノンアルコールビール市場は堅調に推移している。その中で、氷を入れて飲むなど、消費者の飲用スタイルも変化している。

子育てなどが一段落し、比較的生活にゆとりのある世代は、多少の贅沢をしてもいいから満足度を高めたいという人も多いだろう。クラフトビール(量産ではなく、小規模の醸造所で生産されるビール)の人気が高まりつつあるのも、そうしたライフステージやライフスタイルに合ったビール需要の広がりがあると考えられる。

オリオンビールはファンド傘下で海外強化か

わが国ビール類市場の縮小を考える上で、経済環境だけでなく、人々の好みなどが変化してきたことは見逃せない。キリンは低価格(PB)商品の開発戦略を重視し、サントリーは高付加価値戦略で他社とのすみわけを図り、環境変化に適応してきた。

国内の需要低下が見込まれる中、ビール各社には更なる取り組みを期待したい。沖縄を地盤とする国内第5位のオリオンビールは、外国人観光客の増加を足掛かりに、台湾や北米での売り上げ増加を目指している。朝日新聞などによると、同社は野村ホールディングスなどの傘下に入ることで、海外戦略を強化しようとしている。ビールの生産を本業としない投資ファンドなどがオリオンビールの成長を実現できるか否かは不透明だが、同社にとって現状を維持することは衰退に直結しかねないとの危機感はかなり強いのだろう。

ビールメーカーにとって、新しいテイストを持った自社商品(ブランド)を生み出す、あるいは海外でのシェアを伸ばすことへの取り組みを進める重要性は高まるはずだ。デフレで需要が伸びないというよりも前に、自助努力として従来にはない満足感を消費者が実感できる商品を生み出そうとすることが求められる。