キリンがアサヒとの差を縮められた理由

競争の激化を受けて、キリンは、自前主義から他業種との連携・共存に戦略をシフトし、小売り大手のプライベートブランドビールの生産に取り組んだ。一例に、イオンのPBビールである「バーリアル」がある。2018年、こうした取り組みが功を奏してキリンはアサヒとのシェアの差を前年の7ポイントから3ポイントにまで縮めた。

また、サントリーはビールそのものを楽しむというコンセプトのもと、ブランドの育成に取り組んできた。同社の看板商品である「ザ・プレミアム・モルツ」は、泡のなめらかさ、口当たり、香りなど、高いクオリティの実現にこだわった。それによって、同社は“ビールを飲む愉しみ”という価値観を私たちに提供しているといえる。その取り組みがヒットし、サントリーのビールシェアは右肩上がりで推移してきた。

特定の商品がヒットしても、持続的な成長は難しい

市場環境に視点を向けると、わが国ではアルコールを口にする人の数そのものが減少している。なぜなら、少子化と高齢化、人口の減少が進んでいるからだ。

それに加え、消費者の需要(ニーズ、好み)は、経済や社会の環境変化、ライフステージなどとともに変化する。長い間、すべての人が同じ商品を使い続けるわけではない。一つの商品を使い続けていると、飽きてしまうことも多い。これは、需要の飽和だ。消費者に飽きられてしまうと企業の成長は鈍化する恐れがある。

特に、ビールのように余暇を楽しむための商品に関しては、それが当てはまるだろう。特定の商品がヒットし、大きなシェアを獲得したとしても、それが企業の持続的な成長を支えることができるとは言えない。

また、わが国の経済環境からの影響もある。実質ベースで賃金の持続的な増加が実現していない中で、同じ水準の満足度が得られるのであれば、より低い価格のモノを選択することは、消費者にとって合理的だ。