ビール離れの原因は「チューハイ人気」だけなのか
国内ビール大手5社が2018年のビール類の出荷量(課税出荷数量)を発表した。それによると、ビール類出荷量は14年連続で過去最低を更新した。
背景には消費者の“ビール離れ”があるとの指摘が多い。消費者が缶チューハイなど、アルコール度数が高いうえに価格帯が低いアルコール飲料を選好するようになっていると説明される。ただし、それ以外にもビールの需要低下(ビール離れ)の要因はあるはずだ。
ビール類の課税出荷数量の対象に含められる「第3のビール」(麦芽以外を原料とするアルコール飲料)は、需要が増加基調で推移している。また、サントリーのように後発ながらもシェアを伸ばしている企業もある。
重要なことは、消費者が新商品を求めていることだ。企業には変化への適応力が求められる。人口の減少とともに、ビールなどに対する国内の需要は低下していくだろう。国内ビール各社は、海外市場の開拓や新商品の開発を加速し、新しい需要を生み出さなければならない。
アサヒは「鮮烈」「辛口」へのこだわりが強い
2018年、国内のビール類市場におけるシェアランキングにおいて、トップはアサヒビール(37%)だった。2位はキリンビールの34%、3位はサントリービールの16%、4位はサッポロビールの11%、5位はオリオンビールの1%だった。
大まかな傾向を見ると、アサヒのシェア低下が顕著で、キリンとサントリーが健闘している。背景には、ビール各社の戦略の違いがある。
近年、キリンは自前の営業による販路拡大に加え、小売り大手との連携を強化し、第3のビール市場でのシェア獲得に注力してきた。一方、アサヒはプライベートブランド(PB)事業に着手していない。この違いが、両社のシェア推移に大きく影響してきたように思う。
1990年代前半、国内ビール市場でキリンは50%程度のシェアを確保していた。その後、アサヒが「スーパードライ」のヒットによってトップシェアを手にした。アサヒの経営を見ていると、第3のビールへの注力は進めつつも、スーパードライの鮮烈、かつ、辛口なイメージへのこだわりがかなり強いように見える。