コンビニやスーパーの季節商品「恵方巻き」。作りすぎによる食品ロスが問題になるなか、昨年「もうやめにしよう」と販売強化に異議を唱えた兵庫県のスーパー「ヤマダストアー」が、今年は「家庭で巻いて楽しもう」というメッセージを出して話題を集めている。“恵方巻き騒動”はこれで収束するのか――。
ヤマダストアー新辻井店(姫路市東辻井)(撮影=小島清利)

折り込みチラシで「もうやめにしよう」と警鐘

節分に恵方を向いて無言で丸かじりすると縁起が良いとされる「恵方巻き」。コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどでは、激しい販売競争を繰り広げられている。

その一方、兵庫県内で8店を展開するスーパー「ヤマダストアー」の取り組みが注目を集めている。昨年、需要以上に生産し、食品ロスを生み出す無益な競争に対し、折り込みチラシで「もうやめにしよう」と警鐘を鳴らしたからだ。

農水省は1月11日、コンビニやスーパーの各種団体に対して、需要に見合った恵方巻きの販売を要望。その際、チラシで資源を大切にする気持ちを消費者に呼びかけ、廃棄の削減につなげたヤマダストアーの成功事例を紹介した。

その成功例の詳細はこうだ。ヤマダストアーは2018年2月、のりや海産物など海の資源を大切にする気持ちから、恵方巻きなどを広告した折り込みチラシに「もうやめにしよう」というメッセージを発信。「全店、昨年実績で作ります」「欠品の場合はご容赦ください」などの文章を添えた。

ヤマダストアーの2018年2月の折り込みチラシ。(写真=農水省資料)

昨年の実績より多く作るという商慣習と一線を画した独自の販売戦略で、消費者の反応が心配されたが、8店中5店で恵方巻きは完売し、前年に比べて廃棄量を減少させることに成功したという。

今や、節分の風習として定着した恵方巻きだが、その歴史はそう古いものではない。ルーツは、江戸時代に大阪の船場商人が商売繁盛を願って巻きずしを食べたことにさかのぼるという説もある。

ただ、最近のブームの出発地点は、高度成長期に食卓文化の洋食化が進み、のりの消費量が落ち込んだことを危惧した大阪ののり問屋の組合が、のり巻きを恵方に向いて丸かじりするイベントを仕掛けたことがきっかけだ。