ヤマダストアーは顧客もエコ志向

ヤマダストアーが恵方巻きの食品ロスの問題を鎮静化できた背景には、同社の経営理念がある。ウェブサイトには「できる限り最高品質の自然食品やオーガニック食品を販売していきます」と書かれている。

ヤマダストアーのウェブサイトより。

店頭には、生産者の顔が見えるオーガニック野菜や地元産の生鮮品が並ぶ。「食品添加物はもちろん、環境や動物に対して思いやりのある畜産農家や持続可能な漁法に取り組む漁師、農薬を出来るだけ減らそうと努力している農家、自然原料でつくられたスキンケアなどの開発に一層の力を入れ、厳格な品質基準に基づいた商品展開を目指している」という。

食品ロスの問題を解決するには、小売店側の取り組みだけでは難しく、消費者の理解が欠かせない。ヤマダストアーの店頭に足を運ぶ客は、「より自然な食品」「環境を考えた持続可能な食品」を求める意識が高い。このため、食品ロスの解決に道を開くヤマダストアーの恵方巻きの販売方針についても、理解を示す消費者が多いようだ。

ヤマダストアーの店頭の様子。(撮影=小島清利)

コンビニやスーパーなどの小売店も、「予約販売」を徹底することで食品ロスの軽減に向けて力を入れている。しかし、小売業界や海産物業者が稼ぎ時の「恵方巻き」の販売競争からそう簡単に降りるわけにはいかない。ある業界関係者は「予約販売は事前に一定の販売量を確保しておくことや、節分イベントによる集客効果を見込む本音がある」と話す。

この行き過ぎた販売競争に終止符を打つには、どうすればいいのか。ヤマダストアーが呼びかけているように「家庭で巻く」というのはひとつの選択肢だろう。小売店と消費者の双方が、意識と行動を変えていく必要がありそうだ。

小島 清利(こじま・きよとし)
ジャーナリスト、合同会社コンクリエ 代表
1991年神戸大学経営学部卒業。産経新聞社記者として、日銀、自動車、エレクトロニクス、流通、商社などの産業界を幅広く取材。経済本部デスク、フジサンケイビジネスアイ副編集長、産経デジタル経営企画室次長などを歴任。18年合同会社コンクリエを設立、代表社員に。2006年南カリフォルニア大学国際公共政策大学院修了。
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