人気が人気を呼ぶ学区制と実力の関係

公立高校が台頭した背景には、都道府県の学制改革もある。特に影響が大きいのが学区の拡大だ。

「仙台第二(12位)が、仙台第一(115位)を抑えて宮城県のトップ校になったのは、仙台市の中で学区が分かれたときに、仙台第二がある学区のほうで都市開発が進み、教育熱心な層が多く住み始めたからです」(おおた氏)。宮原氏は、「学区を広げれば、トップ校に優秀な生徒が集まりやすくなり、生徒同士がより切磋琢磨することで、高校の学力もレベルアップします」と説明する。小学区システムによって、東京や京都の公立高校の学力が凋落したが、そうした反省から、都道府県で高校の学区の壁を取り払う動きも相次いでいる。

「例えば、日比谷(3位)は現在、東京都のどこからでも受験できます。北野(1位)も大阪府全域から受験できる文理学科を設けたのが奏効しました。堀川(2位)も、探究学科群は京都府全域から生徒を集めています。一方、福岡県などでは小学区制が残っており、全国的に見れば不利な状況ですが、修猷館(23位)は優れた進学実績をあげています」(おおた氏)

トップ校の校風、成長株の校風

高校を選ぶ際、サポートの手厚い学校か気になる親も多いだろう。ただし、「学校の指導だけで、大学受験のテクニックが身につき、難関大学に入りやすくなると考えるのは間違い」と、宮原氏は説く。

実際に、全国トップ校の多くは、公立、私立を問わず、指導が手厚いというよりは、生徒の自主性を重んじる校風だ。また、自由な校風の学校も多く、「愛知県の旭丘(5位)は生徒が自治を行い、制服もありません」とおおた氏はいう。

宮原氏は校風についてこう語る。

「近年優秀な生徒を集めているのは、学校をあげて新しい取り組みをする教育熱心校。代表例は京都の堀川(2位)ですが、今はつくば市の並木中教(93位)が地域性を活かした科学教育で評判です」

東大が推薦入試を始めた今、このような教育熱心校はさらに合格実績を伸ばしていきそうだ。

おおた としまさ
教育ジャーナリスト
リクルートから独立後、教育に関する書籍やコラム執筆・講演活動を行う。著書に『地方公立名門校』(朝日新書)など。
 

宮原 渉
Z会上席執行役員中高事業部長
毎年の東大合格者が1000人超の実績を持つZ会の通信教育(中学・高校生向け)の統括責任者。