「このままいくと、野垂れ死にっすね」

とはいえ、もともと頭のいい高橋さん。現状の数字を“見える化”したことですぐに危機意識が芽生えたようでした。さらに畳み掛けるように「このままいくと将来のキャッシュフローはこうなります」という未来予想図を見せたことで、「60歳の俺、このままいくと野垂れ死にっすね」となり、ある種のショック療法になったようでした。

こういった浪費癖のある相談者には、還暦までのキャッシュフローを確認してもらっています。特に男性は数字で見せられると「ハッ!」となりやすいです。夫や息子の金遣いに心を痛めている奥さまは、ぜひショック療法を検討してください。

ただ、高橋さんが毎月給料の大半を趣味に使ってしまうのは音楽オタクだからというだけでなく、仕事のストレス発散という側面も大きいようでした。クライアントの無茶ぶりや上司の無理解といった平日のウサを、週末のレコード屋やライブで晴らす。そうして高橋さんは精神の均衡を保っているようでした。

急激な締め付けが散財を招くこともある

そんな時に大幅に小遣いを削減してしまうと仕事にも影響が出かねません。このためひとまず10万円を音楽の予算としました。そして生活費を除いた残り約15万円を給料から天引きされる財形貯蓄にあてることに。数カ月かけてある程度貯金ができたら、その時にまた運用を考えようと話しています。

毎月10万円という「音楽費」はかなり多いのですが、浪費癖のある方に突然急激な締めつけを強いると、その反動でさらに散財してしまったり、ストレスがたまって貯金自体をやめてしまったりすることがあります。そのため高橋さんのように徐々に減らしていき、都度、状況を話し合いながら決めることが有効です。

皆さんお金の相談でいらっしゃるわけですが、結局はこうして人生相談と言いますか、お客さま自身の闇に向き合うような作業になっていきます。

人というのは、見たくないものには蓋をしてしまう生き物です。薄々「まずいな~」と感じているのに、とりあえず生活できているからいいやと、自分の懐事情を見ないようにしてしまう。そんな時、ファイナンシャルプランナーであるわれわれがグサッと現状を突きつけることで、変化のスイッチを入れるお手伝いができるのかもしれません。