今年7月、「米ウォルマート社が傘下のスーパー西友を売却する」と複数の報道機関が報じた。ウォルマートは報道を否定しているが、西友の業績は伸び悩んでいる。ウォルマート流の「毎日安売り」は、なぜ通用しないのか。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は、「西友に足りないのはむしろ価格競争力。同じやり方の『オーケー』は徹底したローコスト経営で低価格を実現しているが、西友にはそうした工夫がない」と指摘する――。
西友三軒茶屋店(東京都世田谷区/編集部撮影)

1990年代後半から財務状況は悪化

今年7月、複数の報道機関が「米ウォルマートが傘下のスーパーマーケット・西友を売却する」と報じた。その後、イオンやドン・キホーテ、三菱商事、楽天、投資ファンドなど、さまざまな企業が売却先として取り沙汰されている。ウォルマート側は「売却の決定を下していない」と否定し、11月にはあらためて「日本で長期的に事業を構築する決意でいる」と説明しているが、いずれにせよ西友の経営改革は待った無しの状況にあるようだ。なぜ西友は、経営不振が続いているのだろうか。

西友は、1990年代後半のバブル崩壊から業績・財務状況の悪化にあえいでいた。そして2002年、ウォルマートと資本業務提携を結ぶ。その後、ウォルマートはさらに踏み込んだ支援を行うため、05年に西友の株式の過半数を取得して子会社化し、08年には完全子会社化に踏み切った。

ウォルマート流EDLPで業績回復をはかった

ウォルマートは自身が得意とする「EDLP(Every Day Low Price/毎日安売り)」を西友に移植することで事態を打開しようとした。日本のスーパーの多くは、一部商品を大幅に値下げして集客する「ハイ&ロー戦略」を採用している。大胆に値下げされた特売品に単品単位では勝てなくとも、1回の買い物の総額ベースでより安く商品を提供できれば勝てると考えたのだ。だが、西友のEDLPは“それなり”には安いものの、競合を打ち負かすほどの安さを実現できなかった。

一方で、EDLPで成功しているところもある。首都圏で店舗を展開する食品スーパーの「オーケー」だ。18年3月期の売上高は3573億円。前年比7.9%増と大きく伸びており、いまノリに乗っているスーパーのひとつだ。売上高経常利益率は4.1%と、業界平均2.2%を大きく上回っている(新日本スーパーマーケット協会「2018年スーパーマーケット白書」より)。

西友は非上場のため、詳細な業績は不明だが、現在の年間売上高は7000億円程度とみられる。親会社であるウォルマート・ジャパン・ホールディングスの17年12月期の最終損益は0で、現状で利益が出ているとは考えにくい。