「トランプと金正恩はOSが一緒」と作家の佐藤優氏は語る。トランプ大統領はキリスト教プロテスタントの「プレスビテリアン」(長老派)だが、金正恩朝鮮労働党委員長の祖父・金日成も同じ信仰を持っていたのだという。2人に共通するのは「自分は選ばれた人間なのだ」という自己認識だ。佐藤氏と外交ジャーナリスト・手嶋龍一氏の対談をお届けする――。

※本稿は、手嶋龍一、佐藤優『米中衝突』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

2018年6月12日、米朝首脳会談の共同声明への署名後に握手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とトランプ米大統領(写真=AFP/時事通信フォト)

「反知性主義」の大統領

【手嶋】国の内外で様々な軋轢を生み、厳しい批判に晒されながらも、トランプ大統領は「我が道を行く」という点で基本的にブレない。それはトランプ政権が「プアホワイト」をはじめとする岩盤の支持層に支えられているからです。それは間違いないでしょう。

ただし、同時に、トランプさん自身の内面にあるものが、彼の「強さ」の源泉になっている、というところにも目を向ける必要があるでしょう。それが、米朝交渉でもいかんなく発揮されたし、きたるべき「グレートゲーム」の行方を左右するファクターになり得るわけですから。

【佐藤】そう思います。

【手嶋】その視点から一つ言えるのは、彼が「反知性主義」の系譜を継ぐ大統領である、ということだと思います。反知性主義というのは、“Anti-intellectualism”で、日本語から受ける印象は「知性がない人たち」になるのですが、それは違うのです。その考え方をごく簡単に言えば、「知性と権威が結びつき、エリートが国の舵取りを担うことに激しく抗う」ということになるでしょうか。

「選ばれた人間」という自意識

【佐藤】2016年の大統領選挙でトランプと大接戦を演じた民主党候補、ヒラリー・クリントンは、「知性と権威が結びついた」典型的な人物と言えます。

【手嶋】そうですね。ですから、あれは知性主義対反知性主義の戦いでした。後者が勝利したということが、いまという時代を鮮明に映し出しているのです。

アメリカには、そういった反知性主義の大変太い流れがあるわけです。政治家であれ、経営者であれ、その行動形態はシンプルで、面倒臭い情勢分析や、無駄な知識は必要ない。すべての決断は組織のトップである自分がする。そして、その決断の結果責任は自分が取る――というわけです。

【佐藤】トランプ大統領が、反知性主義の申し子であるのは間違いありません。同時に、日本ではあまり注目されないのだけれど、彼はキリスト教プロテスタントの「プレスビテリアン」(長老派)だというのが、とても重要なのです。

長老派は、神様は救われる人と滅びる人を生まれる前から決めていて、自分は「選ばれた人間」なのだ、と考えているんですね。神学用語では予定説といいます。だから、どんな試練にも耐え抜くことができるし、耐え抜いて成功させる歴史的使命があるのだ、という固い信念を持っているのです。

【手嶋】大統領の言動を思い返せば、納得がいきますね。