トランプと金正恩はOSが一緒

【佐藤】ですから、金正恩も継承する金日成主義には、「われわれは選ばれし民である」「苦難を乗り越え、必ず勝利する」という思想が貫かれているわけですね。正恩が13年に出した論文集のタイトルは、『最後の勝利を目指して』。やっぱり勝利は決定づけられているんですよ。

手嶋 龍一、佐藤 優(著)『米中衝突-危機の日米同盟と朝鮮半島』(中央公論新社)

要するに、トランプと金正恩はOS(コンピューターを動かす基本ソフト)が一緒。だから話が通じるのだというのが、私の見立てです。

【手嶋】面白いだけではなくて、大変重要な指摘だと思います。

【佐藤】単なる与太話に聞こえてしまうのは心外なので、なぜ私に両者の関係がそのようにみえるのかをお話しすれば、それは私自身がプレスビテリアン教会出身だからに他なりません。私も、金正恩とトランプと、OSが共通しているのです。

他の多くの人たちがウィンドウズを載せているとしたら、われわれはマックで動いている。だから、彼らの言動を承認する、しないは別にして、私と金正恩とトランプの間では、「文字化け」が起きません。プレスビテリアン的な発想がない人には、彼らのやり取りは文字化けして、何のことやら理解不能になってしまうわけです。

【手嶋】大変わかりやすい比喩だと思います。佐藤さんも北方領土問題を打開したいと、信念を貫きすぎたために、一時、大変辛い目に遭ってしまったことがありました。(笑)

【佐藤】だから、一歩間違えば危険なのです。(笑)

「光の子」ネットワークができる

【手嶋】その文脈で読み解けば、危機に瀕した朝鮮半島の情勢を変える、そんな共通の歴史的使命を2人が共に担ったことになります。いまは、「自分たちが歴史を動かした」という高揚感に浸っているのかもしれません。

【佐藤】そうですね。聖書に「光の子と闇の子」という概念があるのですが、彼らはお互いに光の子なのです。トランプからみると、知性主義のヒラリー・クリントンなんていうのは闇の子。金正恩にとって、処刑した叔父の張成沢は闇の子なんですね。

【手嶋】なるほど。しかしながら、何やら不気味ですね。

【佐藤】彼らには、自分と「信念体系」が似ているのか否かが、直感的にみえるわけです。そして、光の子同士を点と点で結んだネットワークができる。わが安倍総理も、トランプにすれば光の子です。安倍さんにも、なんとなく「選ばれし者」という強さを感じるでしょう。他には、ベンヤミン・ネタニヤフ、ウラジーミル・プーチン、このあたりは光の子と認識しているはずです。

逆に、アリー・ハーメネイーとかアンゲラ・メルケルとかは闇の子でしょうね。まあ、わが国が「光の子ネットワーク」に入っているのは、短期的にはプラスだと思いますが。(笑)

手嶋龍一(てしま・りゅういち)
外交ジャーナリスト・作家
9.11テロにNHKワシントン支局長として遭遇。ハーバード大学国際問題研究所フェローを経て2005年にNHKより独立し、インテリジェンス小説『ウルトラ・ダラー』を発表しベストセラーに。近著『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師』のほか、佐藤優氏との共著『インテリジェンスの最強テキスト』など著書多数。
佐藤優(さとう・まさる)
作家・元外務省主任分析官
1960年東京都生まれ。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕、起訴され、09年6月、執行猶予付き有罪確定。13年6月、執行猶予期間満了。『国家の罠』『自壊する帝国』『修羅場の極意』『ケンカの流儀』『嫉妬と自己愛』など著書多数。
(写真=AFP/時事通信フォト)
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